光るみなも白い空

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時のない世界

どこまでもつづいているような長い駅で、わたしと彼は汽車を待っている。 
彼とわたしの距離はとても離れている。でもわたしが彼を見ると、彼もわたしをいつも見ている。人々が埋め尽くすプラットホームで、わたしも彼も互いにわたしたちしかいないかのように見つけることができる。
汽車はいつまでたっても来ない。
そんなことはわかっているのに、ここでずっとわたしたちはこうして待っている。
まるでわたしたち以外すべて、紙で作られているみたい。
存在を必要としなくなった世界でなにかをずっと、待っている。
わたしたちは近づく必要もない。
ここから振り返れば、いつも見つめあっているのだから。

あきちゃんといっしょに窓から外を眺めている。あきちゃんは、死体を見たいと言う。
ずっとそればかり言ってる。
わたしは目の前に座っていた少年にふと気づき、彼に横から寄り添い、顔を彼のあったかい背中につける。彼はお日さまのようないい匂いのする白いTシャツを着ている。
彼は東だった。
汽車を待っていたのも、彼だった。
「気づかなかったよ、ここにいたの」わたしはそう彼に言う。
あきちゃんがまた死体が見たいと言う。
わたしはあきちゃんに言う。
景色が流れだす。
「そうは言うけど、実際は吐き気のするような臭いがするで、うちで飼ってたハムスターが死んで共食いして、それが夏の暑さのなか何日も経った臭いを嗅いだことがあんねん、死体ってそうゆうもんやで」
汽車はまるで、同じところをぐるぐると廻っているようだ。
わたしたちはそれを、特に気にしなかった。














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祝福

今日であなたが死んで十三年が過ぎました。



お父さん。
わたしは死ぬまで苦しみたいのです。
わたしがあなたを死なせてしまったことを死ぬまで苦しんで悲しんでいたいのです。
だからどうか、わたしの苦しみを悲しまないでください。
わたしは自分でそう選んだのです。
わたしの悲しみと苦しみを、どうか悲観的に思わないでください。
むしろ、わたしが願ったものをわたしが受けつづけていることに共に喜んでください。
わたしは、毎日生きているという実感がありません。
毎日、亡霊のように夢の中を生きているような感覚でずっと生きています。
わたしはもう、此処に生きていないのかも知れません。
ではどこに、生きているのでしょう。
わからないのです。
でもわたしは日々、喜びや悲しみや苦痛を感じて生きていることは確かです。
もうどこにも存在しないのに、存在しない存在として生きているようです。
「わたしを抱きしめてください。天の父よ。」そうどのような顔でわたしは言えますか?
わたしは今でもあなたを変わらず愛しています。
だから苦しみつづけたいのです。
悲しみつづけたいのです。
自分しか愛せない者のように。
わたしを失う人はもうだれもいません。
わたしはすでに失われた者だからです。
わたしはきっと、あなたとは前世で恋人だったときがあったはずです。
あなたは今でもわたしの父であり、わたしの過去の恋人でした。
わたしは常に渇きます。
あなたの愛に。
今でもあなたがわたしを呼ぶ声が聞こえてきます。
「こず恵」
もうすぐあなたが息をしなくなった時間だ。
お父さんが苦しまないようにこず恵は静かにしています。
わたしはきっとあなたの傍へゆくにはあんまりまだ遠い。
時間が過ぎるのが恐ろしいのは時間だけが過ぎてもあなたに会えないことがわかっているからです。
まだまだわたしの苦しみが足りません。
あなたに再会するためのわたしの悲しみがまだぜんぜんたりません。
わたしは今でもあなたに愛されています。
確信できます。
もしあなたが、家畜に生まれていたなら、あなたをわたしは食べてしまったかもしれません。
罪悪のうちにあなたを味わい、あなたを消化し、あなたを排泄したかもしれません。
あなたを知らず知らずに拷問にかけ、あなたをわたしは殺したかもしれません。
わたしの罪は、きりがみえません。
きれめなく、わたしの罪がわたしをくるしめつづけることを望みつづけているからです。
どうかあなたの娘であるわたしと共にそれを喜んでください。
わたしの中にあなたは住んでいてあなたの中にわたしは住んでいます。
わたしは生きるほどに、あなたの記憶が霧の中へ消えていくようです。
わたしはあなたを、追いかけることもできません。
わたしはまだあなたに触れられないからです。
でもあなたはいつでもわたしに触れてください。
わたしを慰めてください。
あなたのおおきなあたたかい手をわたしは憶えています。
わたしが熱をだして寝ているとあなたが仕事から帰ってきて、わたしのおでこに手をあてたのです。
わたしはそれまでとても苦しかったのが嘘のように楽になったことを憶えています。
あなたは子を癒す力がありました。
今でもわたしを癒してください。
わたしはあなたがわたしを癒すことを知っているので好きなだけ苦しみつづけることができます。
もうあなたが静かに息を引きとった時間は過ぎた。
たった13年間でわたしはこんなに変化しました。
わたしの悲しみはますます深まってきています。
共に祝福してください。わたしの最愛であるお父さん。
この悲しみと苦しみはあなたのわたしへの愛の証です。
これからもどうかわたしを愛してください。
わたしがあなたをすっかり忘れてしまったあとも。
お父さん、わたしを愛してください。














Manslaughter

生きていたらそれでいいんだよ。
生まれ変わるんだ。生まれ変わればいいんだよ。
全員に生まれ変わればいいんだ。
それができないなら、お前は、死ね。
生き物たちの血だまりの中でまどろんでいたら死神がそう俺に呟いた。
幻覚ではない。いや、これだけが幻覚ではない。俺にとっての。
「全員を殺すつもりはなかったけど、俺だけを殺してしまった」と俺は死神に言った。

「耳があるなら聴いてくれ。俺の味噌は、コロちゃんだったんだ」

俺は死神に今までやってきたことすべてを話してしまおうと思った。
「浄水器から痔になったんだ。トマトチップみたいに前駆運動がお似合いで毛細血管の晴れ着姿は美しかった。エミュー、彼はエミューを飼っていた。エミューが俺に言うんだ。天ぷらみたいな顔してんな、って。ブック・オフ行ったことないような後ろ姿してるよな、って。だから涙を流す代わりに、人の血を流したんだ。でもその血は濁ってた。円形の燃える筒の中に捨てた。何を?何を捨てたか、思い出せない。それは、なんでもないものだった。ガムを噛んだ後に薄く伸ばしたもの、そこに砂糖を振りかけると蟻が寄ってくるだろう?それみたいなものさ。日除け、日よけのようなものだよ、灰色の、伝書鳩が休む場所、それを燃やした。ツリガネソウのつぼみの中に入れたエミューの内臓を育てたかったんだ。それは、生まれ変わって、僕のマザーになる。凍える夏の日に映像を一緒に観ることを約束したんだエミューと、なだらかな流線形の洗濯機がそこにあった。僕とエミューは白い泡で洗われて綺麗な姿で光の傍に干される。階段を上ってゆくんだ。人格の階段を。僕らの人格が海にたどり着くように。洗濯機の中で祈りたいんだ。真黒な血を落として、骨は焼いて、肉は食べつくしてしまって。愛しいから想い出せない。なにも想い出せない。全部、死体に見える。全部が死体にしか見えない。どうして人を殺してしまったんだろう。」









ヒラサワ・ドリーム

ぼくは空港のロビーのソファにひとり座っていた。
左側には人々が忙しく行き来して、そこにいつ飛び込んでいくのかわからなかった。
ぼくがどこの国へゆくためにここにこうしているのかさえ、なにもぼくは知らなかった。
まるで、とほうにくれてなにをどうすればいいかわからない迷子の幼児のようだった。
実際、自分が何歳の姿でいるのかもよくわからない。ただぽつんとそこにいた。
気づくと僕の右側のソファに知らない男の人が座っている。
ぼくはその人をしらないのに、その人はぼくの何かを知っているようだった。
するとそこへ、僕の大好きな平沢進が現れた。
ぼくの向かいのソファに座り、ぼくを見ているのかぼくを透かした後ろを見ているのかわからないような目でぼくのほうをヒラサワは見ていた。
そしてヒラサワはぼくの右側にいた男の人に静かに声をかけた。
何かを真面目な顔で話している。
どうやら「この子を養子にしたい」という話を持ち掛けているようだった。
ヒラサワがぼくを養子に?!
ぼくはとんでもなく幸福だった。
きっとぼくは、ヒラサワに父の姿を重ねていたのだろう。
ヒラサワはぼくの望む父性と母性をバランスよく持ち合わせている人のように思えた。
きっとヒラサワの目にはぼくが小さな女の子に映っていたのだろう。
ぼくはわくわくわくわく胸をときめかせてその様子を眺めながら静かにいい子にしていた。





可笑しな夢

[2:42:07] kozue ueda: 今日、奇妙な夢を見たんだ
[2:42:34] kozue ueda: 知らない家にお父さんといるんだけども
[2:42:44] kozue ueda: ベランダになんか棚があって
[2:43:03] kozue ueda: ちょっとだけSFチックな感じで
[2:43:49] kozue ueda: で、お父さんとくつろいでたら、突然その棚の上にあるなんか顔の置物がしゃべりだして、ぎょっとするんですよ
[2:44:05] kozue ueda: でっかい顔だけの置物
[2:44:21] kozue ueda: なんか奇妙なメイクしてて
[2:44:41] kozue ueda: で、よく見たら、お兄ちゃんやったのw
[2:45:24] kozue ueda: その棚の後ろにお兄ちゃんがもう何時間も前に隠れてて、でそこに顔をはめ込んで、驚かそうとしたみたい
[2:45:51] kozue ueda: ずっとそこでじっとしてたんだと思うと、おかしかったw
[2:46:02] kozue ueda: 根性を見せてもらえたw
[2:46:34] kozue ueda: 変な夢を見るもんですねw
[2:47:21] kozue ueda: だからさ、顔をはめ込んで、じっとしてたわけなんだよねw
[2:47:32] kozue ueda: で、私もお父さんもずっと気づかなかった
[2:48:10] kozue ueda: なんか、寂しいというかw
[2:48:17] kozue ueda: ずっと気づいてもらえなかったんだっていうw
[2:49:19] kozue ueda: まあ気づいてたら、ぎょっとさせられなかったから成功なんでしょうね

上辺の世界

ぼくらはみんな水面を泳いでいる。
そこは、上辺の世界だ。
水面には、光がたくさん反射する。
強い光をぼくらは吸収して生きている。
水の底は、とっても暗い。
真っ暗でなにも見えない。
そこには、ほんとうのぼくらが眠っている。
ぼくらのまだ知らない、誰も知らない自分が眠っている。
誰もまだ知らないからそこはとっても暗い。
そこで眠っているほんとうの自分はすべてを知っている。
でも眠っているんだ。
ぼくらのなかで目覚めることなく、まだ眠っているんだ。
すべてを知っているのに、まるでなにも知らない赤ん坊のように眠っている。
ぼくらはなにも知らず、光の水面を泳ぐ。
水面は眩しく、あまりに素晴らしく、底のないほど悲しい。
上辺の世界で、底のない世界を知ることがぼくらにはできるだろう。

怒涛の愛HASEKRSW

2016年、恒心教です!
俺は今年に生まれてきて、去年には死んだ白魔術くんナリ。
耳のある者は聞いてほしい。
命を削って俺は書こうと思う、何をか。
何を、何を書こうか、死神の血は金色だったという結末から先に書かねば仄めかしのゴリホーモ認定を受けるかもしれないが、ここはひとつ、なんにもないところから始めたいと思います。
思えば嘘しかついてなかったのに、どうして真剣に生きてきたんだ。
おっかしぃやろー、それ、おっかしぃやろー、中の人、どうゆう顔してるンゴ。
俺は顔が見たいと思った。どうせ死んでるんやろ、そう思った。
自治会費払ってる顔なのか、見極めたかったのもあったンゴ。
ちなワイはなんJ生まれのなんJ育ち、当職を馬鹿にする者は赦さないナリよ。
ここで希望の全員が、枕を失った。移住地に居住したのち、全員をこれ集め、匿名会議は行われた。
「君の会社の弁当の揚げ物の衣ってなんであんなに大きいの」というテーマから話し合われたが、誰一人、答えは見出せなかった。
いい答えを見出せなかった自辱の思いに全員が絶望した。
しかしこの時、某弁護士が突如現れ苦しそうな吐息交じりで「非常に、ハァ、人生にとって、フゥ、もったいのない時間だとホォ、思うフゥ」と言い残し静かにどこを見てキメルでもなく去って行かれた。
恒心教徒たちは、とっさの出来事にこれ、みな唖然としてしまい何する術も持たなかった。
みな中身のないことをワイワイガヤガヤと賑わしく打ち述べていた時、三十路の白魔術くんはこれ一人自撮りの加工作業に勤しみ、光を失い果てた目を中空に投げかける。
誰かが突然「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ブリブリブチチチチチブリリリリリリュリュリュルユウリュリュリュブリュユウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ブリブリブチチチチチブリリリリリリュリュリュルユウリュリュリュブリュユウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」と絶叫した。
しかし特に何事もなく次のテーマに取り掛かっている教徒の群れの中に紛れ込んでいった。
白魔術くんは、朽ち折れそうな日もあったが、なんとか恒心教徒たちの間に減り込むことによって耐えている節はあったんじゃないか。
ハッセはどこかでと今でも思ってるかどうかはわからない。
でももうすぐ4年も経つんだと思うと何か、神秘的な気持ちで縁というものを感じざるを得ない。
尊師が言った「人は人を愛さなければない」という言葉の意味を教徒たちは永遠に考え続けていかなければない。
私はそう思う。
恒心教に出会ってはや5か月、俺は疲れ切った声で、言い続けた。
「出会いに感謝」
尊師の愛はきっと届く。声なき声に力を。




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プロフィール

白空

Author:白空
1981年8月4日生

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錯覚する情景
悲しみの男カイン
天の白滝
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カウ(牛)にまつわるコンスピラシー(陰謀) ドキュメンタリー映画『カウスピラシー』
食肉、ペット、毛皮、動物実験の現場ドキュメンタリー映画EARTHLINGS

『アースリングス』

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