華倫変

高速回線は光うさぎの夢を見るか? (F×COMICS)高速回線は光うさぎの夢を見るか? (F×COMICS)
(2002/09)
華倫変

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華倫変の遺作である「高速回線は光うさぎの夢を見るか?」を読み終えてしまった。

生涯の大切な漫画になったのですが、読み返すのはつらいです。

性的なことが、人間の心を破壊的に傷つけることを、私は知ってるんです。
この漫画を読んで、今日なんとなく思ったのは
性的なものを映すテレビもパソコンも、エロマンガやエロ雑誌もなければ
私は欝にはならなかったろうし、そのせいでお父さんも死ななかったろうな
ってことでした。
つまり私が絶望しだしたのは、完全に、性的な事柄が原因だったのです。

私は華倫変の漫画が愛おしいです。
性によごれて、本人達が平気なそぶりをしていたとしても
その少女達を見つめている華倫変自身が、とても傷ついてることが
痛いくらいに伝わってくるからです。
華倫変のような性が与える悲しみや残酷さを表現した作品ばかりが世に出回っていたなら
私は欝になって絶望せずに済んだのかもしれない。
とも思いましたが、そこにある哀しみを本当にわからないと、そういえば同じかもですね。
そこにある痛みを私がわかるようになったのは、性に汚れてきた自分がいるからだと思います。

人って、生きるほどに繊細になっていくのでしょうか、それとも
鈍感になっていくのでしょうか?
私は明らかに、性に関する罪悪感や嫌悪感が薄れてきてるように感じるのです。
昔は気が狂いそうになるほど、苦しんでいました。
異性を求める性的なものはすべて、絶対的に汚くて、性欲のある自分はそれだけで醜くて人に顔向けもまともに出来ない人間だと思っていました。
だから異性に対して性欲を抱かず孤独に苦しんでいた酒鬼薔薇を美しいと感じて崇拝して、15歳からの5年間ずっと愛していました。

私が嬉しいのは、私が華倫変を本当に好きなのは、華倫変がそんな女の子たちに自分を
ぴったし重ねて描いてくれたからです。
これは、少し距離をとって、というようなものじゃないと感じました。
性を売って何とかやり過ごそうとした女の子たちの涙はやっぱり華倫変自身の涙なんだろうなと思いました。

私が男なら、果たして、それが出来るだろうか、と思いました。
性を売りものにして生きる女性の苦しみを心から感じることが出来るだろうか。
ヘレン・ミラーは最も辛い悲しみに属するのが恋だと言っていました。
そして性と恋は切っても切れないもの、みたいなことも確か言ってました。
性欲に繋がることが、人間の最も辛い悲しみに属してるということだと思うのです。
だから私は性に関することで、人生に絶望し、父親を失ってしまいました。

性は私の根源的なテーマであり、取り返しのつかない苦しみと悲しみであるのです。