青空のStockholm

どうしようかなぁ

僕はこれから








そうだなぁStockholmの雪に埋もれに行こうよ







どんなところか、知らないんだ、そこ

僕はたぶん知らない、行ったことなんてないだろう、たぶん

だから美しい、とても美しい場所だと期待してるよ



哀しいことなんかじゃないのに、哀しいんじゃないかって

なにか、様子を見られているようだな

僕が何をするか、僕がどう動くか、僕が何を思うか

だから何も聞こえないふりをするんだろう



自分の世界だけで生きてきた僕が、自分以外の人の心を真剣に考えることが

大事なんだ、そんな人に出会うことが大事なんだ

わかったつもりでいてもなんにもならないな





僕、気づくと全力で走ってるや

全力で生きてるや、知らなかった、自分のこと知るのはいつも誰かの言葉なんだ

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目には見えないのさ

かぁ、目に見えることは執着で、目には見えないことは、なんか、このままでいいなぁと思える
なぁ、目に見えることは苦しみ、目には見えないことは、解放か、たくさん苦しんで解放される時の安堵がたまらないだろうな


大事なことは目に見えないことだから

大事じゃないことは目に見えることだから

このままでいようよ、こうしていようよ




僕ね、哀しいのが好きなんだ、けどね

澄み渡った青空もね、僕ね、ほんとゆうと、やっぱり、好き



でもね、その青空はね、哀しい心が見上げるとそこにだけ

広がっているんだ、どこまでも


だからね、みんな青空の下に降り積もった真っ白な雪のような場所に行くんだろう


ひとりぼっちなんない、ね



このまま、ゆこうよ

僕ら軌道にちゃんと、乗れたね

キツネ

言葉では伝えられない 僕の心は臆病だな
怖いのは否定される事 僕の心は臆病だな だな

大切に出来ずごめんね 僕の心は不器用だな 
冷めた後 ようやく気付く 僕の心は不器用だな だな

バウムクーヘン-フジファブリック



フジファブリックのバウムクーヘンの歌詞です











何かを書かないとつらくてしかたないんだろう

何かは伝わってくれないかと思って書くことでしかやりきれないんだろう

今は自分のことも好きで、相手のことも好きで、自分に対しても相手に対しても憎しみがないから

少し、だいぶ、楽になれてきてるだろうか、まだ僕にはなんにもないけれど

相手がたぶん嫌だろうとわかっていてやってしまうことは、悪いことだろう


そうゆうところで、相手を選ぶか自分を選ぶか

相手が自分を選んだなら、自分も自分選ぶのか、それでいいか、いいとは言えない



ただ酒に酔ってると、なんでもいいかもしれない、と思ってする、相手にも自分にも心が広くなる

結局相手にとって迷惑以外の何物でもないだろうに




人の心知れないのはつらい、なら、鏡のように見てもいい?

僕はそれでも好きだから、好きでいてくれないか、と

家族ならそれでいいと思う

でもあの人とは家族にはなれなかった、もう友達にすらなれない



私も、思うよ、執着を超えた場所にしか必要なものはないんだって

執着の中にいる自分は私も好きじゃない



言ったろう、君が好きだと言った星の王子さまのキツネは


きつねは友達がほしくて、王子さまに友達になって、といいます。そして友達になるにはどうしたらいいかきつねは王子さまに教えます。
「言葉は誤解のもとだよ。ただ毎日少しずつ少しずつ近くに座ればいいんだ。」
二人は友達になるけれど、別れがやってきます。
王子さまは自分の愛する薔薇の大切さがわかり、その薔薇のもとへ帰ることにしたから。
きつねは泣きます。王子さまは「ぼくは友達になろうなんていわなかった。君がいったんだよ。友達になっていいことなんてなかったじゃないか。君は泣くんだから。何もいいことなんてなかったじゃないか。」といいます。
きつねは「そう。ぼくは泣いてしまう。それでもぼくにはよかったんだ。だってほら、あの麦畑はこれまでぼくの毎日にはなんの意味もなかった。哀しいことだよ。でも、これからはあの麦畑をみれば君を思い出す。あの金色の麦畑をみたら、同じ金色の髪をした君を思い出す。そして麦畑のささやき声が大好きになるんだから。」


一度その笑顔をその愛らしさをそれを知ってしまった僕が

僕が君ともう二度と話すら、手紙すら、もう二度とそこになにもなくなってしまうことは

僕は嫌だ


君にとって、いいこと何もなかったかもしれない、傷しか与えられなかったかもしれない

僕はまちがっているのだろう

キツネは追いかけはしなかったさ

僕も、そうなりたい、

そのために、自分を少し、殺さなくちゃ?違うよ、生きてゆくよ、生きてゆくためにだよ

愛しんだ花

寒い冬の夜に、ひとつだけ咲く小さな花を見つけて




暗い路の端っこに咲いた霜の結晶を纏ったその花は可愛らしくて




ぼくは毎日その花に会えるのを待ち、その花を眺めては愛しんだ




でも花は寒くても遠い月明かりだけで一人で生きようと決めた




寒い夜に凍えそうな花を毎晩毎夜気になって気になって見に行った




霜枯れをおそれ綺麗なその結晶をぼくの手が落とそうとした




霜を落とされた君は鮮やかな色に蘇り春を待つかも知れないと




ぼくにまた優しく微笑みかけてくれるかもしれないと待ち望みながら



















いい歌だな

永訣の夜

今日は父の命日です

あれから六年

私は、その六年という歳月の長さも短さも感じない、時が流れている感覚もない



でもそこにあったものは



ある時は、ただそれはそこにあってじっとその場から少しも動かない大きな石のようであった

ある時は、ただそれはふわふわと柔らかな風に流されるだけの小さく光る綿毛のようであった

ある時は、ただそれはざざ降りの冷たな雨にずっと打たれている死んだ小鳥のようであった

ある時は、ただそれは遠い遠い水平線にゆらゆら浮かぶ霞んだ幻の蜃気楼のようであった

ある時は、ただそれは知らない列車を一人薄暗いプラットフォームで待つ人のようであった

ある時は、ただそれは淡い夕雲のすきまから線を引いてきた飛行機雲の行方のようであった

ある時は、ただそれは失くした夢を求めて咲いて儚く枯れた小さな白花の少女のようであった

ある時は、ただそれは月のない晩に一人で寒い外で遊んでいる冷たい手の子供のようであった





六年の月日の間、それはただ願うことをやめなかった

再会して絶対に伝えなければいけないことがある

本当の本当に心から心からお父さんのことが好きで好きで大好きでずっとずっとずっと傍にいたかった





永訣の夜に、私はすべてを失くした

そして今までのすべてを受け取った

見えていたのに見ないふりをしていたもの、私はすべてを初めて与えられた

お父さんを失った後にすべてを与えられたのだから

それを殺してはいけない

私は私の中にあるそれを守り生き抜こう

もうすぐ

僕死ななくっちゃ









君へ








僕を殺してくれてありがとう

エデンへ

小さく丸めたからだで音もなく泣いている

優しくて哀しい光が少しずつ注がれる君の中と僕の中に

エデンではなればなれにされた、あの温かい存在と

もうどこへも行けないの、あの人を悲しませてしまったから

傷つけてしまったから、海の底よりずっと深く、僕があの人をひとりにした

僕が君にできることは、そっと見守ること、そっと心の底で君が温かい場所へ行けるように願うこと

ううん、落とし入れよう、あの人を温かな場所へ、連れ込もう

冷たい場所へ上ろうとするあの人の足をつかみ、離してはいけない

あの人を困らせよう、傷つけよう、祈りだけで、冷たいほうへは行かせたくない

低くひどくよどんだ曇り空のエデンは美しい、君と僕が眠る場所、帰る場所

あの温かな世界から切り離された僕らが夢を見る、なんて美しい哀しい場所だったんだろう

追いつめる、あの存在もそう望んでいるはずだ、きっと、恐れは君を引き戻す

エデンに降り注ぐ雨は静かでそこにあった記憶をすべて消し去ってゆく

消え去ってゆくことを僕らに気付かせないまま、とても静かに

何かがこう言うだろう、もっともっと、と、僕の中にいる君をなだめよう

空はやがて暗くなってくる、真っ暗では何も見えないだろう、でも確かに向こうはエデンだ

とても寂しい場所、本来はそんな場所だったあれがエデンだ

向かうべき場所、僕らがまた戻りゆく場所

光の差さない樹に止まった鳥は小さく鳴いている

エデンを忘れられない、そんなエデンへあの人を一人にはおいとけない

僕は向かう準備を整えてゆく、君の眠る声だけを連れてゆく

小さな泉の中をのぞきこむとあの人が愛した僕は哀しい顔で微笑んだ

内緒の一緒

フジファブリックちゃんと聴いたらすごくいい曲あるんだな

ちゃんと聴いてくればよかった

いなくなってから知ってばかりだな























さっき洗濯物干そうとするときにね、理解して喉奥から声出た

君があの日家のこともしないとって、だから帰るってゆったね

アミダサマ読みたいからって言い訳、今思うとかわいらしいな

家のことするの当たり前なのに

休日しかできないかもなのに

だから帰るってゆったのに

なんで、あんなに責めたか自分でもわからない変につらくって

あとで考えたら少し寂しいの我慢するだけでそれで済んだんだ

なんで、もう会えなくなるんだろうわからないわかりたくない

泣きながら洗濯物干し

まだ泣いてばかりいる

だんだん癒えてくる部分とだんだん哀しくなる部分出てくるん

どんどん君が恋しくなってどんどん苦しくなってなにもないや

今日もまだ目瞑れそうにない

君の気持ち何一つわからない

僕の目に君が映ることもうないんだな

君の眼に僕が映ることもうないんだな

気が遠くなって、指折り数えて、また、もうすぐ会える

みちたもお母さんや兄弟に会いたいのかな、会いたいね

僕の知らないところでひとり泣いてるのかもしれないね

僕が楽しい時もみちたはひとりで寂しいよね

じゃあ、ほらさ一緒にさみしいほうがいいね

だれもかなえられないならぼくら内緒で一緒にいる

誰が何と言おうと気が遠くなるほど僕ら一緒にいる

こっちの世界とあっちの世界の違いを見つけない

僕と君の違いを見つけないなにひとつ見つけない

音譜の石  

幸せになってくださいと言っといて、君が前に進もうとすることが憎くてたまらないのさ

でも君が苦しんでいることにも憎しみが沸いて来るよ

話し合い一つせずに終わらせた君が苦しんでいることが憎くて腹立たしくてたまらないのさ

嘘だろうと本当だろうと遊びだったんだと言ってくれたらよかったんだよ

そのほうが僕は救われた
君は僕を救うことを全くしなかったんだ

無言が一番つらいんだ
君はいい加減何かを発するべきだ

自分だけをそうやって守って生きて行きたいんか違うよな

僕は君のこと待ってるんだ

考えてる 僕が君を幸せにできる方法を

ほかの人を好きになるまでずっと考えてるんだ

さよならって言ったからってさよならなんかできるか

君との未来を僕はまだ捨てない、今日もまた眠れないんだ

僕が一番幸せだった時はさ
ほら、僕はあの音譜の石を夕焼け小焼け唄いながら跳んだあの時がすごく楽しかったよ

君が手を繋いでいてくれて

次行ったら君が跳んでみせて

僕は下から君を支えるから落ちないように

そんな危ないところ渡らなくていい

僕は君の全て許してる

君が君を許さないでどうするのさ

跳ぼう、止まった時間

愛憎

今日はよく眠れたし、悪夢ももう見なくなった

ありがとう、感謝してる

でも目が覚めて、あの人の今の気持ち知ると愛憎がつらつらと湧いてきて苦しかった

頭の中で醜い言葉と醜い考えが溢れてくる

起きてコップ洗ってるとだんだん苦しみは消えてゆき

また愛しさが湧いてくる、穏やかな心になって

別物では、ないよな、愛と憎は、愛憎は一つの深い愛だ、それを受け入れる










いい子にしてたら、戻ってきてくれるんじゃないかって

いい子でいたら、ママは僕のところに戻ってきてまた微笑んでくれるんじゃないかって

僕が悪い子だったから、ママは嫌になって、遠くに行っちゃったんだって

子供の考えで、あの人を待っていた

待っている、その時間の中にいる人が待つ場所は

黄金色の夕陽が海全体に広がった眩しい温かい場所で

穏やかな光波に揺られている

悲しいから哀しいからいっそう輝いてるその場所で

待つことはね、喜び

あの時間が柔らかな眼差しで僕の場所へ帰ってくる

みんなの場所へ帰ってくる

愛そう  

眠れなくて苦しくて気が狂いそうで

救いの言葉探した
見つからなくてすごく苦しかった

したら、ふと今日あの子が言ってくれた言葉浮かんで

自分を愛そう

って

自分を愛する

その言葉が出て来ると不思議なほど気持ち落ち着いて来たよ

ありがとうね

自分嫌いだから苦しいんだね

抜け出せたよ本当に 脈拍も穏やかだ

不思議だな

愛された 今 僕は僕に

なんて温かいんだ

悲しみの涙が安らぎの涙に変わる

君も苦しい時は自分を愛してね

愛そうね

もう苦しまなくていいからね

眠ろうね

おやすみなさい

通り過ごしたあとに

今日大好きな人にさよならのメールした

彼は「僕は一生孤独です」って前にゆうてたから

誰かと幸せになってくださいって送った

大嫌いだって私が言った時に彼がずっと悲しい目で私を見てた

あの目を思い出すとかわいそうでしかたない、あの時間に戻れるならな

儚い恋だったけど、本当にとても幸せだった

そして、僕は思ったんだ

幸せって過ぎ去った場所にしか存在しないんだって

振り返って、あの頃は幸せだったなぁって思えればそれでいいんだって

ってことは、つまり今もその幸せの中にいるんだ

そして今が過去になってゆく、その中でこの時間が

どれほど幸せだったのかって未来にはわかるんだ

悲しみや苦しみの通過地点に、今僕らみんないる、生きてるものもそうじゃないものも

そしてこれからものすごく大きな何かに向かってゆっくりと進んでいる

悲しみは通り過ごしてゆくだけ、でも喜びはずっとずっと残ってゆくんだよ

悲しみは雪のようにいつか溶けて、

喜びは雪の隙間からぴょこって顔を出す小さな可愛い芽のように、

生まれてくる何度も何度もね

silentsiren  

何の為形を帯びてるの僕らこれから形忘れてゆくよ

凍てつき我を失う為に悲しみとゆうものが用意された

どこかのお伽話にあるように君は何かを勝ち取りたいだけなんだ

心の器に浸らしたものをすべて孤独な荒野へ帰しに行く

そこら中に散らばっている夢を吸い殻のように踏み潰した

君のこと考えるのがもう怖いから逃げたんだ擦り傷だらけ

行方が途中で終わった心に止まったままのたくさんの時計

あの青空はやっぱり不自然だな僕の心には曇り空がやっぱり一番落ち着くよ

音のないサイレンが僕等に届いていたから避難して正解だった

その器に水汲もうよ二度ともう涸れない水さ哀しみが飲む

喜びの残骸投げた空は君に痛々しい程青く染まった

かなわない想いを胸に抱えてさどこまで行こう無限の譜面

孤独から孤独に戻り安らいだ面持ちさげていってらっしゃい

休ませてあげたい君を可哀相きっと泣いてるひとりぼっちで

純愛

僕はあなたがわからない

あなたはまるでノアの箱舟のようなとてつもない大きな変化を僕に提示して去って行った

僕はあなたに向かって言った

どうして僕から去ったのです?

僕はあなたを引き留めはしなかった

引き留める手段を思い着かなかったんだ

あなたは太陽や月のようにいつも僕の傍にいて、僕を見ているのだと思っていたのに

あなたは何も知らないような目をするのですね

あの日あなたの涙を目にして僕は生まれて初めてあなたを憎んだ

あの涙は今まであなたが流して来た悲しみから溢れたものでなかった

あなたは喜びに溢れていた

それを見た僕は震え上がるほどの恐れを感じた

震える手であなたに縋り付きやめてくれと懇願した

するとあなたは見たことのない優しい微笑みを一瞬僕に交わしたのだ

僕はあの時愛しさのあまり殺意を覚えた

そんな絶望に打ちひしがれた僕の腕をするりと抜けてあなたは去って行った

戻っておいで、もう戻ってきていいんだよ、この世もあの世も嫌だと言うのなら僕が連れてくよ

透明な鳥は透明な虹を選んだ

五日前のことだった

ふいに景色が浮かんだんだ

僕の胸の中から透明な鳥が一羽飛んでいく光景だった

隣では、あの人が寝息をたてて寝ていた

携帯で打ったんだ、透明な、ってさ、そしたら、その次に、虹を、って出てきた

最近、そんな言葉携帯で打った覚えないのに

虹を、って押すと、次は、選んだ、ってでてきた

だから、僕は、そうか、透明な鳥は飛びだって行って透明な虹を選んだのかと思った

でも、その透明な鳥は記憶を持っていないから、僕が連れ戻すんだ

でも、記憶を持っていないから、また飛びだってゆく、そして透明な虹に止まる

その鳥が一体なんなのか、よくわからなかったんだ

でも、今わかったよ、あの鳥はあの人なんだって

もう会うこともできなくなった、あの人に違いない

あの人が隣で眠っているときにその光景が浮かんだのも、これを暗示していたんだね

透明な鳥だから、やっぱり透明な虹が落ち着くんだろう

僕は咎めたりしない、僕もやっぱり、同じ虹を選んだのだから

ぬけみち

ある神社を探していた

その神社の神様は珍しい子供の神様だという

子供だからわがままで気まぐれだそうだ

神社は山奥にあるらしく覚悟はしていたが本当に迷ってしまった

昼下がりの森でいろんな鳥の声を聞きながら少し重くなりかけた足を進めていると

少し先に二人の子供の姿が見えた

私は咄嗟に走り出し子供達に近付き声をかけた

振り向いた二人の顔にはお面が付いていた

夜店にあるような子供の面だが、何十年も前から使っているような風合いのあるものだった

「こんなところで何をしているの?」

そう声をかけた私に鳥の面をかぶった子供のほうが答えた


「抜け道を探してる」


この子達も迷っているのではないかと思い、聞こうとする前に、もう一人の
猿の面をかぶった子供が「早くしないと入れないよ」と言い、二人は
私を置いて風のように走って行った


私はとにかく後を追った。疲れを知らない子供達は猫のように身軽な体で私との幅を広めてゆく


どれほど走っているのだろう
辺りは日も暮れ終わり夕闇が降りて来ようとしていた

走っているうちに何故だか体が自分のものではない感覚になっている

ふわりふわりと勝手に体が走ってくれているような



気付くと私は眠っていた 走りながら意識が飛んでしまったのかも知れない

目が覚めると横たわった私は漆黒の闇に囲まれていた

静寂の一つであるかのような虫の音や鳥の声が響いている

恐ろしいほど満ちてゆくような閑寂に闇の奥をただぼんやり見ていると、
月灯りでだんだん森の中が透け出して来る


視界が広がると同時に何かが聞こえてくる

何人かが歌を歌っているような声だ

私は体を起こし、その奇妙な声のほうへと歩き出した

深い茂みをかき分けて声の居場所を探す、だんだんと声が大きくなってくる

ようやく近づき木の陰からそっと覗いてみると

そこには少し広く空けられた草むらの上に仄暗い小さな火をくべたものを

円の周りにいくつか置いた中で子供達が輪になって回っていて

その真ん中に一人後ろを向いた子供が座っていた

回っている子供達は楽しそうに歌っている

みんな今日出会った二人の子供のような面をつけていた、あの子たちもこの中にいるのだろうか

何故こんな場所でこんな時間に子供達が遊んでいるのだろう

その時突然私が隠れている木の上から大きな黒い鳥が大きな羽ばたく音をたてて飛び立った

私が驚いて頭上を見て、また子供たちの場所を向き直ると

子供たちが全員こっちを顔を向けて止まっていた

まるで敵に見つかってしまい硬直している小動物のようにぴくりとも動かない

咄嗟の何か危うい事態に思え、どうしようか、と私は焦り考えていると

子供達は一斉にざわざわとこちらをちらちらと見ながらひそひそと話しだした

そしてざわめきがぴたりと止まったかと思うと、一人の子供が少し前に出て言った


「そこにいると危ないよ」


何が危ないのだろう、そう思った瞬間背筋の凍るような声が聞こえた

低く唸る声、一匹ではない、何匹ものその声の主は恐ろしく

今にも咬み付いてきそうな飢えた野犬の声だった

私はその途端腰を抜かしてしまったようだ、動こうにも動けない

怖くて目も開けられず震え上がる体を丸めて座っているしかなかった

すると急に体が持ち上げられた

その瞬間恐ろしさを忘れ、昔、父が炬燵で寝てしまった私を

布団まで抱き上げて連れてってくれたことを何故か思い出した

その時と同じように誰かが私を抱き上げて歩いているようだった

それが誰なのかはわからないが、ずっとこのままでいてほしいと思える確かな安心だった



意識が遠のいてゆく、とても心地が良く、それなのに寂しい、寂しい、……さみ……しい……




またあの歌が聞こえている、賑やかに踊りながら歌う、祭囃子のようだ、笛と太鼓の音も聞こえる

私の周りをみんなが回り踊っている、私が鬼なのだ、いつのまにか目隠しをされていた

自分の体も見えないのに私の体は今、子供の私だ、そう何故かわかるのだった


とても楽しいのに、私はいつの間にか泣いていた、子供のように声をしゃくり上げて泣いていた


そっと目隠しの後ろの結びをほどかれた、私は後ろを振り向いた

そこには白い狐のお面を付けた大人が私を見ていた

私には、それが誰なのかわかっていた

その人は私に優しい手を差し出した

私にとってこの世界で一番優しい手を差し延べるその人は

その人が誰であるか、私は、ずっとずっと会いたい人だった

ずっとずっと、私と会わなくてはならない人だった

ずっとずっとこのまま終わりには出来ない夢なのだ、これは

終わらせるわけにはどうしてもいかない夢なんだ……





祭囃子が遠くなってゆく

ああ、また消えてしまうのか……


目が覚めると私は神社の境内の上に寝転がっていた

いつのまにか朝になっていた、眩しい光が大きな木の葉の影に柔和されている

すぐ側に古い木で出来た小さな鳥居があり、その奥にはこじんまりとした小さな社があった

社に近付くと、神殿の中に何かが置かれているのが見えた

それは、お面だった、そういや「そこにいると危ないよ」と

私に言った子供のお面に似ているなと思った














このお話は新居昭乃のOMATSURIという曲からインスピレーションを受けて書きました。
新居昭乃の中の大好きな曲の一つです。
これを聴くといつも不思議で切ない世界へと連れてってくれるのです。


短歌ってこんなに楽しいものなんだね、ありがとう  

眠れない夜は短歌を詠みましょうね そしたら逢える

さみしいな夕焼けを今連れてきて悲しくなれば近付けるんだ


ぼくの声届きませんか青空にそれでも言うよほかにないから


きみが手を伸ばすのならば私から孤独絶望奪ってもいい


こんなこと言えた義理なの?太陽も球形のまま休憩するよ?


皆食べてしまったようだ 黒い鳥さかずきに合うとんでもないよ


忘れてねその言葉だけどうしても 記憶喪失するしかないか

かんがえるじぶんのことを かんがえるあなたのことを壊れてしまう?


喜べば勇気いらない自信ならものがたりにはたくさんあった


もうすぐさ君は覚めるの?まだ鳥も眠っているのにおいでよここへ


気にしない気にすることは君のこと誰かの涙かなえたいこと


僕もゆく だめなんですか?軌道から一番離れ君は微笑った


最初は最後のようで 最後から最初のほうを指差すつもり


本当はわかってるんだ 約束を あの日あの時交わしていたと


たくさんの時計はどこかでその時を待っているから 大丈夫だよ


ほんとだね かならずあえるほんとだよ かならずあえるかならずあえる

彼は死から始まり、終止符を打ち生まれたのだ

温かいもの、優しいもの、美しいもの、純粋なもの、悲しいもの、寂しいもの

そんな愛しい大切に大切にしたい人が、また早くにさらわれたのだ

私は、また一足遅かった




笹井宏之という歌人を今日知った

小学生のころから原因不明の病と付き合い、

部屋の中で彼の心が見た景色や感じたものはたくさんの言葉となった

そんな彼を26年この地上に存在させて、何かがさらっていった

1982年8月1日から2009年1月24日の間、彼はどんな世界を見てきたのだろう

一生に一度ひらくという窓のむこう あなたは靴をそろえる

その窓は、こんな窓だったのかな 些細

暗闇から見た窓の向こうは暖かい光にあふれ、その優しい場所

が見えて、君は小さく頷き靴をそろえたのだろうか

彼の100編の歌 から特に好きなものを載せます

001:始 ひだまりへおいた物語がひとつ始まるまえに死んでしまった

   もうそろそろ私が屋根であることに気づいて傘をたたんでほしい

   門限をやぶろう 清くあるための九時の列車の切符を買おう

   しあわせと不幸せとの境目にきんいろのナイフを挿し込んだ

   風船へむすんだ種が草原となり森となるまでをおやすみ

   からだじゅうすきまだらけのひとなので風の鳴るのがとてもたのしい

   わたしからあなたへ移る人称のさかいに赤い花束をおく

   一緒にね、こう地球儀を回したらどこへでもゆけそうで怖いね
 
   いつのまに雲が生まれていたのだろう メトロノームのねじが冷たい

   五月某日、ト音記号のなりをしてあなたにほどかれにゆきました

   ひとが死ぬニュースばかりの真昼間の私はついにからっぽの舟

   押しボタン式のあなたをうかつにも押しっぱなしで街へでかけた

   あのひとは階段でした のぼろうとしても沈んでしまうばかりの

   苦しくて路面電車になっているひとへレールの場所を教える

   ホチキスの残り最後のいっぽんで私がとめたのは愛でした

   切れやすい糸でむすんでおきましょう いつかくるさようならのために

   感傷と私をむすぶ鉄道に冬のあなたが身を横たえる

   あるときはまぶたのようにひっそりと私をとじてくれましたよね

   氷上のあなたは青い塔としてそのささやかな死を受け入れた

   万象が結露であるとしてもいまこのときのあなたを愛したい

   ひとひとり救えないこの夕ぐれに響け サウンド・オブ・サイレンス

   暗くなるまえにあなたの氷山を打ち砕かねばならないのです

   雨のあさ命拾いにゆくひとへしっかりとしたかごを持たせる

100:終 終止符を打ちましょう そう、ゆっくりとゆめのすべてを消さないように



他ネットから拾った彼の歌を載せます、私は今まで短歌にこれほど心を動かされたのは初めてです

いい歌が多すぎます



からっぽのうつわみちているうつわそれから、その途中のうつわ

借りもののからだのことを打ち明けてあなたはついに氷上の星

猫に降る雪がやんだら帰ろうか 肌色うすい手を握りあう

このケーキ、ベルリンの壁入ってる?(うんスポンジにすこし)にし?(うん)

ひとたびのひかりのなかでわたくしはいたみをわけるステーキナイフ

廃品になってはじめて本当の空を映せるのだねテレビは

猫に降る雪をとめようわたくしの非力な腕であなたを抱く

人々があなたの詠を読んでいる そこには愛がありましたとさ

ひなたにはあなたをおいてぶらんこの鎖をひとつ残らずとばす

ひきがねをひけば小さな花束が飛びだすような明日をください





こちらにまだ残っている私はまだまだ居残りものだな

悲しさも寂しさも温かさも全然足りないのだから

悲しむよりも、彼の行方を信じて愛し続けたい

ラベンダー畑で逢おう  

目を閉じると柔らかい空の下に薄青紫がどこまでも広がっている

僕がいつからか大好きな色だ

僕はいつからか大好きな人達をそこで待っている

必ず逢えるだろう、この場所で待っていれば

僕は待ちくたびれたりはしないんだ

だってそこはとっても美しいから

だからここで待ってさえいればいい

なにひとつ考えなくていいんだ

仄かなラベンダーの匂いの中でずっとずっと遠く遠くにいる君のことを想い続け

僕も眠るよ

尽く遙か尽きる

罪的思想から外れられない、これが僕を一層甘美にさせる

罪しか甘美なものはない、苦しみなさいと神は言う

自分と相手の間の違いがなんであるのか、僕は知らない

相手が死ぬのなら僕も死に、相手が快楽に満ちうるのなら僕も

そこから溢れ返る水だけがまるで余生、冷たくも生温くも君は美しすぎるのだから

何を向こう側に持ってゆけるのか、それだけを考えていた

何が向こうで君の柔らかな笑顔に変わるのか

何が君の蓄えになるか、何が君の種となるか、何が君の喜びに少しでも、僕はそこにはいないだろう

救われないと思われる悲劇のような事態に何故僕が満たされるのか

そこには他にはないとんでもない完全な救いが隠されているからだ

救いを救いと見るな、悲しみの果てが見えてこそ、それはこの世にはない悲しみとして成立する

アミダサマに出てきた律子のような声だと今日精神科で思った、その幼い愛しい喋り方

律子は愛する相手にあまりに慈悲深い存在だった、それはエゴを遙かに超えたものだった

しかし、ふと思う、そんな存在になる為には失った何かがあるのだと

機械仕掛けの神  

“機械仕掛けの神とは古代ギリシアの演劇において、劇の内容が錯綜してもつれた糸のように解決困難な局面に陥った時、いきなり絶対的な力を持つ神が現れ、混乱した状況に解決を下して物語を収束させるという手法”





だから何の為におまえがここにいるのかって聞いているんだ


どうしたのですか?落ち着きましょう。今お茶を入れますね


おまえが本当に言いたいことは何なのか知っているんだ私は。おまえはいつもそうやって私を救うように見せて心の底では私がどうすれば救われないかを考え何かの計画を立てているのだろう


貴方は僕が考えていることを知りたいのですか?

知りたいとも


では、僕が貴方の何であるのか考えてください


おまえが私の何なのかだって?そんなことがわかるか!おまえは最初から私に付き纏い、まるで影のように私から離れない。考えてわかることじゃないだろう。しかしおまえの魂胆はわかっている。この前だってそうだ、おまえは私が苦しんでいるところを見てほくそ笑んでいたではないか!


ええ、そうですね、僕はいつも正直なのです


ついに化けの皮を剥がしたな、出て行け!おまえなどいなくとも私は生きてゆけるのだ


出て行くことはしませんよ。僕は貴方が何よりも愛おしいですから、それに僕がいなくなれば貴方の行き先は見えている


それはどんな行き先なのだ


僕がいないことに耐え切れなくなり必ず僕をまた側に呼ぶはずです


そんなことはただのおまえの妄想に過ぎない、私はいい加減疲れたんだ、解放してくれないか


解放…僕は貴方を縛った覚えはないですよ、僕も貴方から縛られていません


じゃあ何故おまえのことを考えるとこんなに苦しいのだ


苦しい?僕はこんなに嬉しいのに貴方は苦しいのですね、おや、お腹が空いたのですね、今すぐ作りますね


待て、まだ話が終わっていない


貴方は今酷く疲れています、僕は貴方の為になりたいのです、貴方にとって僕はとても必要なのです


(溜め息)何故なのだろう、何故苦しいのに心地良いのだろう、あいつは一体何者なんだろか











さあ!できましたよ、食べましょう……泣いているのですか?