明晰夢というのは、夢の中で「あ、ここ、夢やわ、夢の世界に今、わし、おんねやわ」と今いる世界が夢だとわかること、明晰に夢であるのだと自覚することです。
しかし、今日俺が見た夢は・・・・・・。
俺は実家にいた。現実ではもう六年くらいは帰っていない実家。
実家のテレビのある居間にいた。
ものすごく暗かった。日が沈んでるのに何故か電気をつけていない。
俺は電気の垂れ下がった紐に手を伸ばし、電気を点けようとした。
紐を引いても一向に電気がつかない。
俺は、あれ、と思う。俺は思い出す。
こんな夢をそういや何度も俺は見たな。
暗い部屋で、何回も電気をつけようとするのに全然つかなくて不安で怖い夢。
俺はぞっとする。
まさか、だって、現実の世界にいるという感覚がちゃんとしっかりある。
ここは間違いなく現実の世界だ。
しかし、何故ぞっとしたのかというと、過去に見た夢の中のその時と同じような自分の感覚で俺は紐を引いて点かない事に不安を感じたからだ。
でも違うのは、今いる世界が現実であるというしっかりとした意識と感覚を持っていること。
それなのに、電気がつかない。おかしい。夢と同じようなことが起きている。
俺は不安と恐怖にかられ、そんなはずはない!ここは確かに現実の世界のはず、そう思い私はお兄ちゃんの部屋に走った。
お兄ちゃんは布団の中でぐっすり寝ていた。
私はお兄ちゃんの右のほっぺに自分の頬をすりすりしてほっぺにキスをした。
お兄ちゃんが起きると、私は「電気がつかへんねん」と話した。
お兄ちゃんと一緒に居間に来て電気をつけようとするが、やっぱり点かない。
部屋の中がすごく暗い。
でもふと窓の外を見ると、窓の外は結構明るい、雨が降っていてどんよりとした暗さのような色がある。
雨が降っている、私は窓を開けて、手を伸ばした。雨が手にちゃんと当たった。
間違いない、雨の当たった感覚もはっきり感じる、ここが夢の世界のはずはない。
じゃあなんで夢と同じように電気が点かないんだろう。
もしここが夢の世界なら、本気で電気をつけようと思えば、点くはずだ。
夢の世界とは、そうゆう世界だから、信じたらその通りになるはず。
しかし私は居間の電気にはもう触れないで、ご飯を食べる部屋の電気のスイッチに手を伸ばし、つけた。
電気はついた。オレンジ色の明りの電気がついた。
「ついた」と私はお兄ちゃんに言った。
でも、これ、違う、と私は思った。
電気点いたのに、暗い、部屋が暗い、暗いままやん。
そこで目が覚めて、また眠りに入って別の夢を見て、また覚めて、この強烈な怖い夢を思い出して、暗い部屋の中、電気をつけるのが怖かったこと、怖かったこと。
つかなかったらどうしようという怖い気持ちで電気をつけた。
またそのときに限ってなんでか、一瞬の間を置いて電気がついて、びびったこと、びびったこと。
良かった、電気はついた、ここは現実世界だな、そうほっとして起きて僕は今、日記を書いている。
なんという夢を見たものだろう。
これは明らかに明晰夢の逆パターンである。
夢の中で、夢だと自覚するのではなく、夢の中で、現実だと自覚すること。
今、思い返しても、確かに現実にいるんだという感覚があった。
それなのに、と同時に、夢の中と同じようなぼわぼわした感覚でいたことも今になってわかる。
お兄ちゃんの部屋に走る時とか、明らかに床を走っていた感覚もない。
なのに、夢の中の僕は、夢だとは信じようとはしなかった。
現実のはずなのにと言う気持ちでいた。
いったい、これはどうゆうことなのだろう・・・。
確かに今までも目が覚めたと思ったら、それも夢で、っていうのは何度か見たことがあって、そのとき自分は夢だとは思わずに夢から覚めた現実として過ごしていた、でも今日見た夢のような、はっきりとした、意識を持って、ここは現実世界だ、というふうに自覚したりすることはなかった。
ただ、ああ夢から覚めたな、とぼんやり思っていただけだった。
一体何故、僕は夢を夢とは認識せず、夢を現実だと認識したのだろう。
だって今思えば、すごく夢っぽかったはずなのに。
もしかしてこれが明晰夢に凝りだすことによって起こってしまう危なくて恐ろしい事態の前触れのようなものなのだろうか。
明晰夢に凝って現実世界へ戻れなくなると言う話は、夢から覚めたらまた夢で、の繰り返しをし続けることで結果戻れなくなることじゃなく、夢の世界を現実だと思い込むことで、現実だと覚めるはずもないので、覚めることを拒むあまりに、とうとう戻らなくなる、自ら、そういうことじゃないのか、もしかして。
これは確かに危うい、かなり危ないことだと思う、真面目な話。
だって、覚めることを拒んで自分が夢の世界を現実として信じ込み、そっちの世界を本当に選んでしまった場合、この現実世界のほうの俺はどうなるのか。
俺は夢の世界の俺の見る夢の世界の自分になるのか?
逆になる、俺のほうが夢になってしまう、この世界のほうが夢の世界になってしまう。
そんなことがあっては恐ろしい。
だってここは間違いなく現実の世界であるし、まさか夢のはずはないだろう。
確かに、起きてトイレに行くとお漏らしするような感覚で用を足すことがあるにはある。
しかし、まさか、ここが現実の世界ではないと、誰が信じられる?
ここは確かに現実世界だよ、あっちが夢のはす、あっちが架空の世界。
本当の俺のいる世界、ここが、今の俺が本物だ。
そういや、夢の中で、此処が夢だと気付くと、目が覚めてしまうことってあるね。
もし、もしもだよ?今俺のいてる世界が夢だとするならば、夢だと気付くことによって覚めてしまうのかもしれない。
もしかして、覚めないために、みんな現実世界だと信じ込んでるんだろうか。
だって消えちゃうから、夢を夢だとわかってしまったら、この世界が消えてしまうはず。
誰も夢を見なくなったら、この世界って、どこにもないはず。
駄目だって、夢じゃないよ、夢じゃないよね、夢だと気付いたら、もう、戻れなくなるよ。
ここは確かに、現実世界だ。
そうだよね、みんな。