きおく

わたしの顔は醜いので俺は絶望的になった。なんとかして禿げたいとわたしは思わなかった俺も。泣きながら死んだ夢を見た日もあったかもしれない。それはあなたであった。どこからやってきたのかカモメがわたしの頭の上に載っていたと思う。そしてわたしはこう言ったあなたも。どうしてもこのカモメはわたしなんだ、と。蔓が巻かれた体であなたは言ったわたしも。今これから言おうとしている。誰からの声が聞こえなかった日が来なかった。庭には海辺があって小さなプランターの中には今日の晩御飯が入っていた気がしてるが本当なそんなことはなく横にあった杉の木は木のくずを枝で削っていたという記憶だけが記憶としてない場所に寝ていてそれはあなたが聞いている夜に聞こえている。なけなしの金を握ってあなたは会いに来てくれた俺も。嬉しかったけれども、思い出してカモメなんだと俺も。ここにはわたしとあなたしかいなかったと覚えている俺も。小さな庭には大きなプランターがあってそこにあなたは寝ていた俺も。あなたは言おうとしている、ここにいなかった日はなかったよ俺も。あなたの顔は美しいのでわたしは絶望的になった俺も。禿げたらいいんじゃないだろうかと俺は思わなかったわたしは。山を海に投げたらもう山は山ではないけれど海ももう海じゃない。じゃあそれがなんだと言うと、禿げたらいいんじゃないだろうか、あなたも、俺、も、わたしは。大きな庭には小さなプランターがあって小さなあなたはそこに入った小さなわたしを見ている俺は。小さな海と小さな山がある、小さなあなたは小さなわたしに向かって微笑んでいる俺は、何か言おうとしているきおくではないきおくだけがきおくに感じるきおくを胸に抱いている俺というきおくはちいさなわたしに向かって微笑んでいるちいさなあなたにきおくを持ってきたことを今忘れようとしているきおくがとおくなってゆかないままわたしは離れてゆく俺はなにかを言おうとしているちいさなあなたとちいさなわたしがいるきおくを胸に抱いている俺に何か言おうとしているちいさなわたしとちいさなあなた。



















Aphex Twin- Nanou 2
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