青いリンゴ

僕の愛する人は何かが崇高だという意識がない。
だから僕も見習って。
そうだよー俺はだめじゃないんだよーでもすごくもないんだよーじゃあなんだってっと普通なんだよー俺は誰だよー。
俺は誰かより劣らなければ誰かより優らない、至って凡人サァ、みんな同等だ、みんな凡人だ。
みんな糞だ、みんな屁だ、あの糞はすごくてあの糞は悪い、とかないよ、糞はなにやっても糞なんだよ。
俺はなにやってもだめじゃない、でもなにやってもすごくない。
なにもすごくない、なにもだめじゃない。
そこに価値を見出せないとゆうなら、俺はもう、死んでしまおう。
こんな世界、生きてたって、なんにもないんだから。
つまらない、糞だ、屁だ、屁ぇ~だ。くっさ~。
いや別にだめだからなじゃないよ、だめだから死ぬんじゃないよ、つまんないからさ生きてたって。
なにかはすごくてなにかはだめだとか、なにかはうつくしくてなにかはみにくいだとか、俺はそんな凡庸な価値観を手にするために生まれてきたんじゃないぞ。
俺は彼になるために、生まれてきたんだ。
彼の考えはすごいんだ。
彼は美しい、彼こそ美しい。
彼こそ崇高な人だ、誰よりも、俺の求めていた人。
彼に俺がなれないなら、なれないなら、なれないものなら。
せめて彼に愛されたい。
彼の愛を独占して死ねるなら、ま、ええかなぁ、別に?別に?別に、そんな、ねぇ、大きなこと、大きなこと、大きな、彼は宇宙だ、そうだ俺がなりたいのは宇宙なんだあ、宇宙の愛を独占するなんてできるはずがなかったのに、俺はよりにもよって、宇宙に依存してしまったんだ、宇宙なら無償の愛をくれてるはずだが、しかし宇宙は特別に誰かを愛するとかないからなぁ、彼の顔はいつもリンゴで隠れていた、彼の顔は宇宙だったから絶対見せられなかったんだ、そこには真理があったから、真理はかつてあったが、今はない、それが真理(心理)だって夢の中で彼は言った気がする、青いリンゴで顔を隠して、言ったんだ、真理は今にしかなく、過去と未来にはない、彼は本当に言った気がする、真理は、どこにもない、って、最近だよ、最近きっと見たんだ、すべてが真理であるが、すべて真理ではない、って彼は確かにそう言ったんだ、無関心が愛に劣らず、愛が無関心に優らずって、彼はだって宇宙だから、僕の宇宙だから、僕の愛するたったひとつの宇宙。

目が覚めると、彼は僕に告げた。

「いまはあなたのことが好きです」

今、えたいのしれない闇が、青い。
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