光るみなも白い空 | つぶ貝のおっさん

つぶ貝のおっさん

ま、いつの時代も人間関係っちゅうのはあれですよね、むつかしいものですよね、誰だってね、いつだってね。
そんなわたくしも一応人間を33年やらしてもらってる者でございまして、やらしいものじゃありませんよ。
ほんに、むつかちいなーって思ってるんですぅ。いっやーまいったなーって、まあなにがどんなことがあったかといいマスト、良いマストをね、探してないよ、べつに、ばか。
僕は常日頃、いつもゆうてるんです、「俺は嘘はでいっきれいだからぁ、本音で言ってよね、ね、ね、ね、ね、言ってくれなきゃいやよいやよいやよ、ね、いいね、ほんとうだよ」とわたくしはいつも人に言っておるのね。
で、昨夜、わたくしは知人としゃべっておりまして、ま、知人といっても愛人みたいな関係なんですけどね、ま本当のことゆうと恋人なんですけどね、ま、ここは知人と言っておきましょう。
彼のちょっと変わった話癖とゆうものがありまして、どうゆう話癖かと言いますと。
彼は前に何度も話したことを、さも初めて話すように喋る癖があるのです。
それは彼自身も前に話したことは覚えてるし、あえてもう一度ふざけて初めて言うように言うこともあれば、そうではなくて、これを言わないと二の句が告げないといって、その話題に続く事柄を言うためにもう一度話すということがあるようです。
たとえば昨日の会話はこんな感じでした。
「わたくしも嫌いなことがあります、店員に偉そうな態度をとってる人を見ると嫌な気持ちになります」
「では私がそのようなことをしたら、あなたは嫌いになるのですか?」
「いや、嫌いにはならない、うちの父がそうゆう人なのです」
「それ前も聞きました」
「いや、前も言ったけど、もう一度言ったんです、そうやって言われるのはぼくは嫌です」
「だって前に話したこと忘れてるのかと思って」
「覚えてますよ、でもこれ言わないと次の話題に入っていかれないので言ったのです。うちの父がそうゆう人で、でもぼくは父を嫌いではないと言いたかったのです、でも嫌いな部分ではあります。そうやって言われたのは僕は初めてです、周りにそんなことを言う人はいません」
「なんか…言い方が悪いというか…よくわかんない…」
と、ここで二人とも傷ついて黙り込んでしまい、わたしはとうとう「あなたに嫌だといわれるのはつらいです」と言って、彼は大きなため息をついた後に「すいません」と謝りました。
今日起きて、思ったのは、ああ私が本音を言ってくれよとあれほど言ったから、彼は「嫌だ」という気持ちを正直に言ってくれたんだと、彼は前から人になかなか傷つけるような本音をいうことができないと言っていたので、もしかしたらがんばって言ってくれたやもしれんかった。
なので私は彼に本音を言ってくれ、言われないほうが傷つくから、と言いながら、本音を言われて、つらいです、と言ってしまって彼を困らせてしまったのであった。
それは僕自身もつらいと感じてつらいと言ったので本音を言っただけなので、そうして本音を言い合ったら、やはり互いに苦しいというのはわかる。
ではここで、互いに本音は言わなかったパターンの会話を書いてみよう。ちょっと同じだとつまらないので、こんどは行け行けの若者バージョンで書いてみる。
「俺も嫌いなことあるよ、店員に偉そうな態度取ってるやつとかさぁ、見てっとチョーウゼーってなるよ」
「へえ~あるんだ~(前もそれ聞いたよ…)」
「じゃーあたしがーそのチョーウゼーことしてたらどうするー?チョーウゼーってなるの?」
「いやそれはならねえ、うちの親父がそうゆうやつでさぁ」
「うんうん(それも前聞いたって…)」
「親父のそうゆうとこはまあ嫌いだけど、親父自体を嫌いになることはないしぃ」
「そっかそっかー(前にも話したこと忘れてるのかな・・・)」
「好きだぜ」
「あたしも嫌いなことがあってぇ、おんなじこと何回も言う人ってチョーウゼーって思うんだよねぇ」
「へぇ・・・それって・・・俺のことじゃね・・・?」
「ちがうちがうーだって同じこと言ってないでしょ?」
「え、あ、ああ、うん(前に話したの忘れてるのかよ・・・)」
「なんかそうゆう人が知り合いにいてぇ、マジでムカつくんだよねぇ、おんなじことばっか聞きたくねえよって感じでぇ」
「へぇ・・・でも、それもさ、ほら、次に新しいことを言うための必要な話だとすると、やっぱ必要ジャン?何回でも言うのは」
「いや、それならさぁ、前も言ったけど、ってつけてほしいんだよね、前も何回も言ったことをさも初めて俺は話しますって感じで言われるのが嫌なのぉ」
「へ、へぇ・・・俺もそうゆうこと、よくあるけどな・・・」
「え?!マジでぇ?気づかなかった~あははっ」
と、これが本音をあえて直裁に言わずに遠まわしで嫌味のように言うやり方で、それに相手が気づかなければ特に何事もなし、で終わるのだろうが、相手がそれって俺への嫌味なのかなぁと気づいてしまえば、なんとなぁく嫌ぁな空気がその後流れ続けて、しかし、それってもしかして俺への嫌味?と本音を言うことができないので、もうずっとその嫌ぁな引っ掛かりが付き合ってる間中ずっと付き纏ってしまうこと請け合いなのである。
ここでもし僕が遠まわしに言うことさえ我慢すれば、相手はちっとも傷つくこともないだろうけども、そうすると今度は僕がもやもやをずっとしっぱなしで、そのうちなんかで切れたときに、「それから、おまえ同じことばっか何度もゆうのやめろよ、うざいから」とかなんとか言って結局おじゃんな我慢となるであろう。
だーかーらーやっぱしぃ、人は本音を言うほうが互いに傷つけることになろうとも、良いのではないかと我は想ふのである。
しかしなんだろう、このひぃっじょにさびしいこころうちは。
そういえば、彼から嫌ですとはっきりと言われたことがなかった気がするるるるる。
嫌って言われると、やっぱ傷つくもんやなー、俺だって傷つけたくて言ってるんじゃないんやけど、なんか引っかかるねんな、同じことをはじめて言うように言われるのが。
野菜カリーうまっ、バカウマ。バカウマシ。馬鹿ウマシカ。
結局、人間というもんは、本音を言っても、本音を言わないでも、傷つけあってしまう生き物なんだってことぉ。
ってなんか女子高生みたいな日記みたいなになってきたみたいな。
もしかして恋をすると人間はアホになるのだろうか。
あ、そうか、アホになるために恋をするのか。
でも俺はもともとアホだったので恋をして、アホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホアホあほあくらいになってるんやろね、頭あほあ。
まあ誰一人こんなアホアな日記なんて読んどらんやろから好き勝手書いたれ。
われ、なんぼほろれも、阿呆なん書いたらんかいぃっ、ちゅてね、ちゅてちゅてね。
はぁ、さみし、こんなあほな事書いてるのも我が寂しいからやっちゅうねぇんんん、ちゅうてね、ちゅうてな。
あぁ、さみし、あぁ、さみし、あぁ、さみし、あぁ、さしみ、あぁ、さしみくいたいなぁ、つぶ貝、つぶ買いしたった、ちゅってっな。
つぶ貝のつぶ買いとゆうのは、一パック8つのつぶ貝が入っていたそのパックを持ってレジに並び、順番が来たときに、「あのすんません、このつぶ貝ひとつだけ売ってもらえませんか?」と訊いて「ちょっとそれはできないんですよ~すみません」とレジのおばはんに言われて、でも諦めきれず、レジのそばにつぶ貝のパックを持ってじっと突っ立って閉店間際になったら、もっかいレジに行って、「お願いします、どうしてもこのつぶ貝、ひとつだけ売ってほしいんです」って言って困らせて、やっとこそ売ってもらえたつぶ貝のつぶ買いであった。

そして次の日、またもや同じレジに並び「すみません、つぶ貝、ふたつだけ売ってもらえませんか?」と言って困らせ、同じやり方でやっと売ってもらえた。
そしてまた次の日、「すみません、つぶ貝、三つだけ売ってもらえませんか?」と言って購入。
そしてまた次の日、「すみません、つぶ貝、四つだけ売ってもらえませんか?」と言って購入。
そしてまた次の日、「すみません、つぶ貝、五つだけ売ってもらえませんか?」と言って購入。
そしてまた次の日、「すみません、つぶ貝、六つだけ売ってもらえませんか?」と言って購入。
そしてまた次の日、「すみません、つぶ貝、七つだけ売ってもらえませんか?」と言って購入。
とうとう、一パックでしか買えなくなった日、おっさんはとぼとぼとスーパーの鮮魚売場に行くと、まさかのつぶ貝が、売られていなかった。
その日から、そのスーパーにつぶ貝が売られることは店がなくなるときまでなかったという。
おっさんはつぶ貝のおっさんとしてそこらでは有名になった。
おっさんはつぶ貝のおっさんや、と呼ばれたら、すこし、嬉しそうな顔で笑うんだった。

「つぶ貝のおっさん」完

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Author:白空
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ナレーション:ホアキン・フェニックス

音楽:Moby

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