亡霊の夢

亡霊の暮らしをしている皆さん、本当に申し訳ございませんでした。
夢の中で亡霊を生きるのは大変だったでしょう、わたしの夢の中で。
確かにわたしは、あなたを騙した。
あなたに告げた階は、あなたの求めていたものがない階だった。
あなたが透明なエレベーターで昇っていく間わたしと父は逃げました。
あなたは、亡霊なんです。気づいてなかったんでしょう。
ではなぜ、あなたはわたしたちを。
何もない部屋へ連れて行こうとしたのですか。
亡霊の笑いはこの世の笑いではなかった。
だからわたしたちはあんなに逃げたのにちがいない。父がいない。
わたしは確かにお父さんと逃げていた。何名もの亡霊は後を追って。後ろを振り返ってはならない。
車の後ろをきっと追ってきているのだから。さっき騙した亡霊も。
あんまり世界自体が暗いと黒いのか白いのかわかんないね。この世界は。
バックミラー越しに亡霊が映ったよ。
この世のものではないからすぐわかる、この世のものはいない世界で。
白いそれは恐ろしいのに懐かしいからすぐわかったよ、鏡に映った後を追ってきたのは時間を失ってもなお生きているわたしという亡霊だったよ。
隣で運転するお父さんはまだ気づいてない。世界がこんなに消えかけているおかげさ。
お父さんの隣に座っているわたしは亡霊におびえて、つかまらないことをただ望んでいた。
あの亡霊は存在をしていないんだから、消えることだってない。
ばかだなぁ、わたしは。わたしをつかまえられないのはわたしだったんだよ。
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