もうほとんどが腐っていたんだ。
俺のベランダに在るなにもかもが。
ほぼ腐っているものばかりだった。
盥の中には3匹の腐った蛇が死んでいたし。
それをベランダにあけると腐った水が俺の足に浸って。
俺の足に腐った水がかかりよるんだよ、俺の足に腐った水が。
亀は三匹、なぜだか無事だった。
どうやって水槽から出たのだろうか。よじ登れる高さじゃないのに。
隣との境にある下の隙間には腐った皿に入ったおかずやらが。
全部腐ってるんだ、腐ったものを置く必要があって置いてるようなんだ。
横の隙間から覗いたら、隣に部屋なんてなかった。
あったのは俺の部屋の開かずのベランダ。
壁しかない。じゃあなんでこんな壁があるんだ。
狭く汚いそのベランダ。一体何のためにあるんだ。
窓がないんだから、ってなんだよこの壁は、壁の意味はなんだよ。
意味のないベランダが怖いんだよ。
死人がずっとそこにいるような、そのベランダが。
罅状に茶色くなったその床。隙間から覗けば。
そうだ、学校にいたんだ俺は。
教室の中みんな座ってた。
窓の外は景色がネガポジ効果を反転したような。
変な世界で外に出れば黄色い入道雲がもくもくと黒い空に浮かんでいた。
人に教えた瞬間もう雲は色を変えてしまうんだ。
教室に戻れば中も変だった。
みんな生きることを忘れたように見えるんだ。
授業中、先生もいない。ドアの外、誰かの声。
「爆弾がもうすぐ!わしゃわしゃわしゃわしゃ」
私はみんなに教えるより先に自分の身を守るため。
窓際の机の影、頭抱えしゃがみこんだ。
教室の中で爆発が起きるところを私は想像。
ヴィヴィッドピンクの明滅!私が観た色。最後に。
緑の入道雲、オレンジの入道雲、私がいる教室、私がいない教室、恒常。
昼間なのに黒い空。黒い人。
家族のいなくなった世界。
反転。