「世界は終わらない」と言って泣いている男が、ここにいる。
ジンとテキーラのビンを片手に一本ずつ持ってライヴで踊っている夢を見た。
テキーラはゴールド色のだ。
家に帰って一人音楽を聴きながら観た視聴エフェクトは黒と白のスクエア立体が踊る未来にあった。
明日もジンとテキーラを持って同じライヴに行く。
恋人から連絡が来ない日だけ、男は昼から酒を飲む。
男は恋人しか喋る人がいないから恋人から連絡が来ない日は酷く孤独で宇宙で一人になった気持になりNOTEPCの液晶デスクトップ画面を何時間もずっと見つめてじっとしている日も多い。
そんな男のなぐさみとなるのは酒と音楽、この二つが男の空間を別次元へとチェンジさせる。
男の未来を見ている、そんな気分に男はなる。
この男の未来を今この男は見ている。
Popnonameは1978年生まれの3つ上の男で3年先の音楽を聴かせてくれる。
3年先の未来の音楽だ、まだこの男が知らない人生をこの男は知っている。
でも今聴いているのは彼の過去の音楽だ。
彼の未来が今現在の男の音に重なり非常に心地がよい。
男の知っているはずの音だからこんなに心地がよい。
しかし未来の音を聴くとき、きっともっと心地がよいはずだろう。
男の未来から音楽がやってくる。
未来の音を聴きたいと思う。
しかしこの男は3つしか上じゃないのでこの男がそれを聴くときちょうど3年後となってちょうど並んだ時に聴くことが多いため未来の音をなかなか聴けないということにならないために世の中にはシングルと言ってアルバムより先に未来の音楽を聴くことが出来るようにしている。
だからシングルを聴くことの大事さを男は生まれて初めて解ってその愛する曲たちがワールドを作り出したアルバムを近々聴けることのたまらない嬉しさと喜びに男は後悔をちょっとした。
何故ならそのアルバムは2013年に輸入版が既に発売されており、それを今になって知って初めて聴くと言うことは2年もの未来の時間をこの男は失ったということだから、男はショックでしかし届くことのわくわくさを胸に抱いて今息をしている。
でも今日夢の中でPOPNONAMEがかかってたので今日聴きたかったのに今日頼んでも今日届かない。
家の中にタワーレコードがあったら今すぐ買って聴けるのにもしくはタワーレコードの中に自分の家があるのでもよい。
壁はなくって毎日人々がCDやらDVDやらを買いに来るのを手に茶碗、手に酒を持ちながら観察している。
もしこの男が好きなCDを手に持ってレジに並ぶ人間がいたときはすぐさま走り酔って「おれ、おれ、おれも、こ、このアルバム、好き、ええよ、これ」と言いニヤリ気色の悪い笑顔を他人に向けてあとで思い出して自己憎悪の果てまた。
何かに泣くのだろう。
「恋人から連絡が来ない」と言って苦そうな顔で日記を書いてポエティックテクノサウンドポップを聴いて、酒。
「今日から自動書記を禁ずる」そう言ってイカナゴを、と書いて男は黙り込む。
なんでもない、気のせいだこの男はそんなワードをワールド創作に必要としたはずがないはず。
今日も暗くなってくる。朝からずっと雨で曇りでどちらかわからない窓を閉め切っているんだわかるはずがない磨りガラスは外の世界がこの男に見えないようにするため作られたことをこの男は今も知らないまま。
音楽を聴いているこの男の未来の音楽を待つ男は今と過去の音楽を聴いている。
未来の夢を見ていた。しかし目覚めるとそれは過去の音楽だった。
最近ずっと尿意と便意を限界まで我慢してしまうがなんでだろうと男は思っていた。
酒を注ぎに行くついでに用を足せばいいものをそれをせずにまた椅子に座る。
まだ我慢できる、とこの男は我慢して意味のないものを我慢して何かを成し遂げようと必死になる。
用を足してなんのいみがあるのかとこの男は思っている。
用を足すことに意味を見出せないから限界まで我慢して膀胱炎になりかけている。
生きることに意味を見出せなくなった者は限界が来るまで生きるための日常的な行為をやめてしまうことを男はまだ知らない。
膀胱が痛くなって重い腰をしぶしぶ上げるそれも酒を注ぎ足しにいくついでだから、ただのついでで行くだけだからと言い訳をぶつぶつ言いながら。
意味のないことを絶対したくないからでもただのついでにするだけだから意味がないとかあるとか関係ないはずだと男は納得するまで座っている。
膀胱が破裂しかけてるのにパスタを食べているのはこの男だ。
我慢している顔を誰もいない部屋で誰にもさとられないようにしてすっきりした顔でパスタを口に運んでいる。
やっと男は重苦しい腰を上げてドアを開ける。
スッキリした顔で酒のグラスを持って男は戻ってきて机に向かって椅子に座る。
さっきはゴールドテキーラにドライベルモットとライム果汁と水で割ったやつだったが今度はスカイウォッカとグレープフルーツ果汁と水で割ったものにしている洗ったマドラーを床に落として床に置いていた鍋の蓋に当たりチャラララァンと鳴ったので男は吃驚した顔をした。
男は食欲がない目の前を横切ってゆく埃を目で追っている。
何故炊いた米をジンとテキーラと一緒に冷蔵庫に入れておいて米が硬くなってしまうのかこの男は思い悩んだ。
硬くなった米をライブに持っていくと食べるとき硬いから柔らかい米のほうが男は持って行きたいと思っている。
電子レンジで温めて持っていくという手はあるけど足はない足で持っていくのはなかなか大変だ。
でも結局向こうに着けば冷めて硬くなるのだろうそんな未来が男に待ち受けていることをこの男はまだ知らない。
たくさん人が踊っているところで硬い米は食べたくないたくさんの人が踊っているところで柔らかい米を食べたほうがいい。
今日は2015年だが明日も2015年なのだろうかと男は思っている。
安い酒の悪い酔い方を楽しんでいるこの男は今がどこにあるかをまだ知らない。
未来の男はきっと知っているだろう未来の音楽を聴くのが楽しみだそこに今があるのを知るときが楽しみだ。
そのライヴでこの男は踊っている歌っている。
それ以外は何も覚えていない。
目が覚めると何の音楽が鳴っていたか思い出そうとしても思い出せない。
その音楽はその男の中で流れている。
Echonomist - Lean on (feat. popnoname)