七つの夕方

「お父ちゃんはさつ人しゃ」
    
                                 1ねん3くみ  きりじま れい


ぼくのお父ちゃんはじつはさつ人しゃです。
このまえ、お母ちゃんがお父ちゃんに向かつてさけびます。
「ひとごろしのくせに!」とお母ちゃんがおこってお父ちゃんにいうと、お父ちゃんはとてもショックをうけたかおをしています。
で、お母ちゃんは自分でいつたあとに、すぐにハットしたかおをしてゆうてもうたわ、とゆうかおをしますた。
それでお母ちゃんは泣きながらすぐにお父ちゃんにあやまつてますた。
お父ちゃんは「べつにあやまることないよ」といっておかあちゃんのあたまをナデナデしてぼくのかおを見ますた。
お父ちゃんはいつもかなしそうなかおをしてるけど、いつもよりもっとかなしそうなかおのよなきがします。
ぼくもなんでかかなしかったでした。
さつ人とゆうのは、人が人をころすことだとゆうことでした。
どおゆうことだかぼくはかんがえた。
いっしゅうかんくらいかんがえたのによくわからないでした。
でも、それはとつてもとつてもかなしいことなんだとおもいます。
おとうちゃんが、いつもゆーうつそおなかおをしてるのもそれにかんけいしてるんだな。
ぼくはいちど、お父ちゃんに「ねえねえ、さつ人しゃってどおゆうことなの?」とききます。
お父ちゃんがトイレに入って出てこないので、ぼくはまちます。
出てきて、いいました。「さつ人ってゆうのは、人が、ぜったいにやったらあかんことやで」お父ちゃんはそれだけいきをぜーぜーいいながらいって、おそとへ出て行ってしまいます。
ぼくはこころのそこからこおかいした。
お父ちゃんがかえってこおへんかったらどないしょお。
でもお父ちゃんはなんと39分でいえにかえってきたのだった。
ぼくは泣いていたのに、お父ちゃんはなんでかすっきりしてそおなかおで、すこしはらたった。
でもお父ちゃんは泣いてるぼくのあたまをいつもやるようにクシャクシャしながらナデナデしてくれた。
ぼくのはらの虫はそれでおさまつた。
だから、ぼくは、おとうちゃんに、あやまつた。
で、お父ちゃんにいいます。「ぼくは、お父ちゃんがさつ人しゃでも、ええで。おとうちゃんがさつ人しゃでも、ぼくはかまへん。だっておとうちゃんはぼくにやさしいし、ぼくはだからお父ちゃんが大すきやし、だから、だから、おとうちゃんはそないにかなしまなくてええとおもう」
おとうちゃんは、ぼくをだまって見ていた。
なんか、ボーットしたかおだった。
それからなんでかお父ちゃんは二日かいしゃを休んだ。すごくしんどそうだった。
ぼくはもお、どうすればいいのかわからない。
先生、おしえてください。
お父ちゃんがやつたことは、どおゆうことなんやろう。
どんなにたいへんなことなのか、ぼくはかんがえてる。

ところで今日は、七夕の日です。そうです。ぼくのたんじょびです。七さいとなります。
今日、少しねつが出てがっこうをお休みしたのでみんなからプレゼントのおたんじょびカードをもらえなくてざんねんでした。
今はもう元気です。みんながもうがっこうからかえってるじかんです。
おきたら、お母ちゃんがいませんです。いえでひとりぽつちでこころぼそいなおもってると夕ぐれがやってきておそとがうすぐらくなってきてぼくはふしぎと元気になってきてるです。
きっともうすぐお母ちゃんがかえってくる、お父ちゃんももうすぐかえってくるんやろな。
そういえば今日の七夕のたんざくのやつ、ぼくだけまだかけてなかった。
一回目、たんざくにぼくはかいたの。「ワニってなにくうてんのかな、で、なにかんがえてんのかな」ってゆうやつ。そしたら先生が「これはおねがいごととゆうよりかただのかんがえごとみたいなしつもんみたいになってるやんか、そうじゃなくてかなつてほしいことをかくんやで」といわれて、かきなおししなくちゃならなくなったのでまにあわなかったんです。
で、ぼくはひつしにかんがえてまたかきます。もうたんざくにかざってもしゃーないけど、せっかくかいたから先生におしえたげます。
ぼくのおねがいごとはこおです。
「みんなで、わらいえある日が、くるとええな」
これをお母ちゃんがかえってきたらいえにかざつてもらえるかどおかきいてみました。

おわり。
関連記事