でらい愛

自分は駄目だなあと思う。
駄目なもんだから同じく駄目な人間の集まりであるハセカラ民と仲良くなることで自分の駄目を紛らわせばええんやと思った俺が阿房やった。何故ならそんなハセカラ民族の彼らからもこいつは駄目だと判子を押されて除け者にされ、脱糞した糞をバケツに溜めたやつを頭からぶっ掛けられるという世話を受けて尻尾巻いてとぐろ巻いて逃げ帰ってきた場所が、あーた、またこのこつこつと自分の思いを140文字以上にして書き続けるというブログ世界であったわけだなっつって、まだ話が終わったふうに思われないでほしいのは、わたくしは全くの駄目やって思ったときに、何故だかかぜだか我が生涯の師匠である町田康の強くも厚くもぶれない胸に突き刺さったままずっと残ってゆくみたいな言葉を求めて無意識に約二日間ほど、わたしは多分に求めた結果、こんなすぐに師匠は言ってくれたんだ。しかしなお、我が心の師匠の町田康は決して、けつして、人を励ますために言ったわけではないことを師匠本人が前、ゆうとったで、人を励まさなければならないみたいなそうゆうのはいらんやろ、みたいに前ゆうてはったで、だからこの発言もけつして人類全員を励ますためのものではなく、寧ろ、人類を全員どん底へ突き落とし、自らも堕ち抜いて同じ土壌の上にでろんと立ちはだかって、さあ来い、とでも言ってるようにおまはんには聞こえませんでっしゃろやろかいなっつって、まあ長々と前書きが多いなあ、もう、なんの話やねん、って思ってみんな肝心のところ読まんで帰るみたいなことがあるとこれはいけない。ってんで、あじゃあ、あじゃあ、あじゃあ、前に貼っておこうかなって一瞬思ったけどまあええか、強調しておけばええか、なんていうか、俺は師匠の言葉にやっぱり愛を感じるわ。人間自体に優劣はないっていう師匠の想いは、でらい愛やでほんま。
「でらい」(奈良の葛城市内の方言で大きいという意味)

芥川賞対談 津村記久子さん×町田康さん
すみません、こちらから全文転載させて頂きました。
なお若干だけ色が変わってる部分が強調の部分ですとりとり




芥川賞対談 津村記久子さん×町田康さん

大阪・今宮高同窓生

契約社員として働く独身女性の日常を細やかに描いた『ポトスライムの舟』で芥川賞受賞に決まった津村記久子さん(31)と、芥川賞作家でパンク歌手の町田康さん(47)はともに大阪生まれで、大阪府立今宮高校の先輩後輩だ。昨年11月に野間文芸新人賞を津村さんが受けた際、町田さんは選考委員を務めた。受賞を記念して、接点の多い2人に、文学や音楽、大阪の記憶について語り合ってもらった。

町田 受賞おめでとうございます。忙しいでしょう。
津村 ありがとうございます。エッセーを8本頼まれたり、色々と大変です。
町田 今回、『ポトスライムの舟』と受賞後第1作の『とにかくうちに帰ります』(新潮3月号掲載)を読んだんですけど。
津村 えー、すみません。雑誌が出たばかりなのに。
町田 津村さんの小説は、身につまされる場面がある。『ポトスライムの舟』で、主人公のナガセが仕事帰りに自転車のブレーキパッドを盗まれるでしょう。
津村 はい。
町田 あのときナガセは、とっさに自分の年収163万円を貯金することに決めた。話の流れと脈絡がないけど、人間はそんなもんですよね。
津村 はい。全然、わけの分からないことで、ちゃんとした決意をしたりする。町田さんの『宿屋めぐり』は、大権現様に太刀を奉納する男が、旅の途中で超能力者や大金持ちになったと思ったら裏切られたり右往左往したりする展開が、普通の人間の人生が描かれた作品よりもリアルで、生きるしんどさがとても伝わってきました。
町田 津村さんの小説は、収入が低かったり、大して能力のない人間が出てきたりします。それは多分、みんなそんな状況で生きているんだよ、という思いがあるからではないでしょうか。
津村 そうです。はい。
町田 僕も、この言葉は嫌いなんですけど、駄目人間ばかり書いてるって言われます。でも自分としては、普通の人間しか書いているつもりはない。駄目じゃない人間が果たしているのか。そんなのいないのではないか、と思います。
津村 『宿屋めぐり』の浮沈のリアルさと比べると、現実の人間を描いた伝記は生き方がスムーズに見えて、むしろ身に迫ってこないように思えてきます。
町田 大阪は商売人の街だから、「まっ、堅いことは抜きで」みたいな実質本位で、普通の人が普通に生きていく日常の細かいところから、積み上げながら考えていくところがありますね。
津村 そうですね。一般的なイメージから演繹(えんえき)的にものを書く習慣は全くないですね。30歳のOLやったら、一回は上司と不倫して……みたいなことは書かん。
町田 それは環境もあるんですか。
津村 ええ。今宮高校に通ったのも大きかった。校舎がJR新今宮駅のそばにあって、おっちゃんが近くをいっぱい歩いてる。
町田 ああいう場所は、東京には身近にないですね。

通天閣近くでリヤカー

津村 高校時代はコギャルブームの出始めでした。でもテレビに映る「女子高生」と自分が同じに思えなかった。軽音部の活動で演奏をしたら外でホームレスのおっちゃんが踊ってたり、美術部にも入っていて絵をリヤカーに積んで通天閣の近くを歩くと「しんどいな」と声を掛けられたり。
町田 渋いな。リヤカー。
津村 あのころ、自分を「女子高生」と思えなかったのは、他人を「OL」「主婦」などかぎ括弧でくくらず、その人間の生なものを積み上げて観察する性格につながったかもしれません。

お金のこと理屈っぽく

町田 『ポトスライムの舟』は大阪弁を使ってますね。大阪の言葉を小説で使うと、そのことに酔ってしまうことがある。だけど、津村さんは大阪弁にもたれかかってない。冷静に作品の中で操ってますね。それと、受賞作には「時間を売って得た金で」という文言が出てくるけれど、お金のことを理屈っぽく考えるのも良かった。
津村 「これ、いくら?」とお金に換算するのは、大阪人の感覚かもしれないですね。『宿屋めぐり』も、すごくお金のことが出てくる。実生活でも、私はうどんの値段がやたら気になる。
町田 意外に共通してるわ。僕は世界一うどんにこだわってるパンクロッカーで、うどんの歌がたくさんあるんです。
津村 家の近くのスーパーで、うどんが一玉25円なんです。でも京都の友人の家の近くの店に入って、一玉60円のものを見かけると、物価高いなと思って、すごく落ち込むんです。
町田 世界の基軸通貨が、うどん。
津村 町田さんの高校時代はどうでしたか?
町田 高校に友達はいたけど、当時ロックも一般的でなく、パンクはもっと誰もやってなかった。学校で行事があっても、みんなフォークソングやニューミュージックを歌うような雰囲気でおもしろくない。最後の方はあんまり学校には行きませんでしたね。
津村 でも、うちら「(パンク歌手の)町田町蔵さんが卒業した学校やねんから頑張り」みたいなこと先生に言われましたよ。町田さんにとって、音楽と小説の関係は、やはり強いのでしょうか。私の場合、音楽を聴いたからだと思うのですが、文章の正しさよりも音を優先させるところがある。
町田 僕の場合、リズムに乗せて日本語を歌うことをやってきたから、考えなくてもリズムが良くなる。むしろツルツルしてしまうので、わざとカクカクさせたり、ずっこける感じにする。僕は小説で大切なのは、音楽のノイズ(雑音)にあたる部分をカットしないことだと思います。
津村 雑音ですか。
町田 世の中の新聞や雑誌に載るニュースや記事は、理路整然としている。でも、それを根底から問い詰め、排除されたものをとらえ直すことで小説は始まる。パンクとは疑うことです。
津村 コンビニエンスストアで世間に流布する音楽を聴くと、たまに死にたくなる気分になるときがあります。言葉に無頓着だったり、何か整った価値感を押しつけられたりするようで。そういうものにはあらがいたい。
町田 仕事は続けていくんでしょう? 午前2時から4時まで書くそうですね。
津村 お金のこともあるけれど、私の場合は家にこもって小説を書き続けていると自意識過剰になってしまう。仕事中に私のサイン会の整理券を上司のおじさんが席に持って来たり、わけのわからないことのある方が自分を保っていられます。
町田 奇麗な音ばかり聴いていてはダメだと言うことでしょう。色々なことを言われるかもしれないけど、関係なく書き続けてください。
津村 どうもありがとうございます。現実に耐え、書き続けていくつもりです。

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— 2009年2月12日 読売新聞
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