17年前と17年後の今

陽が差して来て、陽が陰るのを繰り返す。
そんな安らかで静かな午後の部屋で。
今日はとても風が強いよ、お父さん。
17年前の今日、ぼくはお父さんを喪って泣いていたのに。
17年後の今日、ぼくは大切な存在を喪ったかのように泣いている。
ふたりは、ちいさなちいさな彼らは、ぼくのことをまだよく知らない。
ぼくも、彼らのことをまだよく知らない。
でも彼らを、ぼくはお店から連れて帰って来た。
彼らは他の子たちより、安く売られていた。
ぼくは、一目見て、彼らを買うことを決めた。
彼らは、ちいさなちいさな身を寄せ合い、共に眠っていた。
ぼくは初めて、彼らに触れた。
とてもその身体は、あたたかかった。
柔らかい彼らは怯え、ふるえてぼくの手から離れた。
ぼくは店の者に訊ねた。
彼らは兄弟なのか?
店の者が言うには彼らは血は繋がっていないが、幼いときからとても仲が良くてずっと一緒にいた。
ぼくはふたりをちいさな箱に入れて家に連れ帰った。
帰りは真っ暗で、雨が降って来た。
とても寒い日で、ぼくは傘を持っていなかった。
ぼくは箱のなかの彼らを覗いた。
彼らは身を寄せ合い丸まって眠っていた。
約一時間歩いて、彼らと共に、ぼくは家に帰って来た。
ぼくはひどく疲れきっていたが、ほんとうにホッとした。
その日からまた、ぼくの家は賑やかになった。
ぼくは彼らが、ふたりで共に暮らし、ふたりで共に食べ、ふたりで共に眠る姿を眺めるのがほんとうに好きだった。
ずっとこんな日がつづくことを心から願っていた。

でも、今日、それは終わってしまった。
もう二度と、そんな姿をぼくはもう見れなくなった。
まるでママをパパが殴って、ママとパパの微笑み合う姿を二度と見ることはできなくなった幼い子どものように、目が痺れるほど独りで泣いた。
もう戻れない。
何故こんなに、世界は悲しいの…?お父さん。

肌色のちよっちは、お腹に傷を負い、初めて少し出血した。
黒色のしろっちが噛んだか、引っ掻いたのか、軽めに噛んだつもりが歯が引っ掛かった状態でちよっちが急いで逃げて皮膚が裂けたのか、わからない。
ちよっちはとても元気なのにしろっちは元気がまるでない。
ぼくは彼らを別々にした。

ぼくは彼らを愛している。
でも彼らはもう一緒に暮らせない。
もう二度と、ちよっちとしろっちは、共に眠ることができない。
どんなに寒い日も。どんなにさびしい日も。
あたたかい身を寄せ合って、共に眠りに落ちることもない。
取り戻せない時間は、どこに存在してるの…?お父さん。
どこかに、今も存在しているんだ。
今も、ふたりは、共に眠り、同じ夢を見ている。



























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