悩みの木

人はみな、悩みの種を蒔いた

蒔いたのだから、芽が出てきました

小さく可愛らしい芽はすくすくと育ち

やがて大きな背の高い木になりました

ある日みんなの悩みの木を切ることができる者が現れた

さあ私が切ってあげましょうと言って木は次々に切り倒された

その者は僕の処にもやってきて、

「やぁ、君の悩みの木はなんて大きいのだろう、もう大丈夫だよ

私が切り倒してあげよう」と言った

僕はその者から斧を取り上げて言った

「僕の木を倒さないで!こんなに大きく育ったんだ

これは僕の木なんだ、倒すのなら僕は自分の手で倒したい」

「それでは、君の悩みは大きくなるばかりだよ」

「いいんだ、これは僕の悩みには違いない、でも、この木を眺めていると

緑の葉は風に心地好さそうに揺れて、梢には小鳥たちが止まりに来る

それがあるから、僕は嬉しい、どんな大きな悩みでさえ、

僕は抱えてゆきたいんだ」

木を切る者は諦めて呆れた顔で帰って行った

僕の悩みの木はそれからもすくすくと伸びて行った

毎日苦しく哀しい思いに悩まされたが

僕の木にはもっとたくさんの葉がつき、美味しい実がたくさん生り

たくさんの小鳥たちが実を食べに来た

僕はどんなに苦しくても喜びを感じることができた

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