ぼくは王様

ぼくは、いつからか、この世界の王様だった

全ての国の上に立ち、全てを裁く存在なのだ

罪を犯す者があると、皆、ぼくの法により素早く牢獄に入れられた

ぼくはこの全世界の王であったが、

いつの日からか、ぼくは希望を失い

毎日のように死を望む癖がついた

何度牢獄に入れようが、懲りず、繰り返し罪を犯すものがいた

ぼくはその者に聞いた「何故あなたは罪を犯し、自ら不幸になるのか」と

すると、その者が答えた「私は王であるあなたが絶望でいることが耐えられない、

私はあなたの不幸を自分のものとした、罪を犯し牢獄に入ることなど

少しも苦しくはない、ただ、あなたの絶望を思うと私も絶望であり毎日苦しい」と

その言葉を聞いたぼくは、気持ちを改めようと思い

この世界に希望が溢れ、苦しむものがいなくなるように

ぼくは絶望を捨てようと決心した

そして何年間かぼくの持った光は皆の光となり

罪を犯すものはいなくなった

世界を見渡すと、皆笑っていた

ぼくの光は人たちから、悲しみというものを消した

家族が死んでも、誰が死んでも皆嬉しそうに笑っていた

この世界に微塵足りとも闇は消え去った

ぼくでさえ、絶望が何か、闇が何か、忘れ去っていた

そんなある日、ぼくはいつものように目覚め、小鳥たちの鳴き声

眩しい朝日の中、何十年ぶりかに、絶望の闇がぼくの体内に満ちて

声もなく泣いていた

何が悲しくて泣いているのやら、まるでわからなかったが

ぼくはただ涙が一日中止まらなかった

すると、次の日から、また罪を犯すものが増え出して行った

闇も駄目だ、光も駄目だ、さぁ、ぼくは困った

毎日それについて考えているけど、まだ浮かばないや

ぼくだって必死さ、闇でも光でもない、さぁ、なんだ、何だってんだ!!

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