光よ。

光よ。
光に閉ざされた光輝く羽根よ。
薔薇の花から落とされた金色の滴に満ちて、
満ち足りた死から、彼は死を亡くしたのだ。
光は産毛のように、その手から剝ぎ取られた。
その足の指は、強引に毟り取られたが、
彼女はリスクを問わなかった。
死が其処に満ちていたからである。
彼女は言った。
「今日、痛かったさかい、明日も痛いやろう。」
神は天から彼女に言った。
「違う。」
ふわっふわの毛玉が、天を見上げた。
何もなかったが、あたたかい光線が、
そのとき、彼女を見下ろしていたのである。
「死はまだか。」と、彼は言った。
ボケた老人のように。
「今、なんっつったんだ?」彼女は彼に向って言った。
彼女は彼を見つめたが、彼の眼には、ふわっふわな毛玉が、
蒼く透き通った空の果てで、揺れている金色の羽根の生えた
ちいさなちいさな毛を毟り取られた右手が、観えたのだが、
その正体は、わからなかったという。
だから、光よ。
天の光よ。
今、満ち足りた人が、死んだのだ。
こんなに悲しい夜の果てに。
ひとりぽっちで死んだあと、空を見上げたのだ。
「寒いけど、あったかい巣があるから、ぼくたちゃ安心だよね。」
「そうさ、あいつに奪われなきゃ。」
ふわっふわの毛玉たちが、そう言ったあと、
暴れる冷たく凍る風を切って、枝から枝へと、駆けてった。
「ぽんぽん、痛いけど、我慢だもんね。」
彼女は、我が子の背中を毛繕いして、そう言った。
でも、光よ。
こんなに満ち足りて、日の光のなか、彼は死んだのだ。
羽根が生えてるのに、まだ埋葬もされず。
ぼくたち、あのなかに、あの満ち足りた日のなかに。
いつか、行くのかなぁ。
その死が、ちいさなちいさな死が、
確かに夜の冷たい空を見上げ、そう言ったのだ。
そうだよ。ここから、まだ観えないけれど。
死んでしまったちいさな彼に、ふわっふわな毛玉だった彼らに、
ぼくはここからそう言った。
















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