僕はアリス
懐中時計をぶら下げたみちたとゆううさぎの
後を追っていたら迷ってしまったんだ
どこか安心できる場所を探してた
明かりのついた家を見つけてチャイムを鳴らすと
優しそうなシュピーゲルとゆう人が僕を家に迎え入れてくれた
温かい暖炉のそばに僕を座らせてくれて
おいしいご飯を食べさせてくれた
僕はとてもとてもうれしくて
シュピーゲルもとてもうれしそうだった
だから僕はここで暮らそう、そう思ったんだ
もうあんな暗い森で一人で迷うことないや
寂しくて怖くて寒いところにはもう行きたくない
でもある日シュピーゲルは僕のことをとても怒った
僕は苦しくて家を飛び出した
外は凍えそうなほど寒かった
けれど、家に帰るとまたきっとシュピーゲルは僕を怒るんだ
だから帰れなかった
僕は暗い夜道を歩きながら考えた
なんでシュピーゲルは僕をあんなに怒っただろう?
僕はそれほど悪いことをしたのだろうか?
考えても考えてもわからなかった
ただシュピーゲルはあの時本当に悲しそうな顔をしていた
僕はシュピーゲルが怖いと思った
きっと僕のこと嫌いになったんだ
だから僕を追っても来ないんだ!
帰るもんか、あの家に
僕はひとりでもきっとやっていけるさ
シュピーゲルは僕をちっとも愛してくれてなかった!
僕は泣きながら夜の森を歩いていた
お腹がすいてもう歩けなくなって僕は道に倒れこんだ
意識が遠ざかろうとする中で
やっとわかったんだ
あの時僕はシュピーゲルのこと何も考えちゃいなかったな
あんなこと言ったらきっと傷つくかな、それをわかってて
僕は言ったんだ
だから僕はシュピーゲルに嫌われて当然だったのさ
だって僕がシュピーゲルを愛していなかったんだ
そう言えばここは鏡の国ってところらしいな
聞いたことがある
その国では自分以外のものはみな自分を映す鏡のように
自分の心がそのまま相手の心になるらしい
相手の心はみんな僕の心
僕は自分が怖かったんだろう
誰も愛せない僕の心を自分は愛せなかったんだ
だからそれを映したシュピーゲルは僕を傷つけた
シュピーゲルは僕の心を映しだしただけだった
シュピーゲルとまた仲直りするには僕が
愛せる心を持つしかないんだ
それしか方法がないんだ
僕はもうこのまま死ぬのだろうか
シュピーゲル、僕は君の微笑んだ顔を見るのが一番幸せだったよ…
…アリス!
…遠くから声が聞こえる…
…アリス!
シュピーゲル…