ある晴れた春の午後

君の誕生日の午後に、僕は君に何も言わず家を出て

僕は歩き出した。

空が本当によく晴れていた。

青空に伸びた鉄塔を探しに行くつもりだったんだ。ひとりで。

でも君は僕の後をついて来た。

僕は君に気づいていたけど、ひとりで歩き続けた。見覚えのある道を。

日差しがきつかった。

君は僕に「どこにゆくの?」と聞いた。

僕は何も答えなかった。

ただ青空に写る鉄塔に早く登りたくってしょうがなかったんだ。

少し遠くに鉄塔が見えた。

僕はマイペースな速歩きで近くまで歩いて行った。

胸の高さぐらいの柵を越えればもっと早く近づける。

僕は柵を登ろうとした。

すると君の手が僕の腕を掴んで離さなかった。

だから僕は回り道をしようと思って、団地の周りを歩いた。

緑の草原が目の前に広がり、少し高い丘の上に鉄塔は立っていた。

僕は鉄塔に向かって走った。

でもすぐに君にまた腕を掴まれた。

君は腕を離してくれないから、しばらくそのままでいた。

でも君の手が離れた瞬間僕は必死で走った。

太い錆びた鎖を上に持ち上げて走ってくぐった。

必死に照らす太陽の下の鮮やかな草の上を必死に走った。

でもまた君が僕をつかまえた。

君はその時何か言ったっけ。

僕は覚えてない。

ふたりで長い時間日の当たる草の上に座ってた。

僕が君に「私のことなんかどうでもいいくせに」と言うと

君は僕の頬をはたいた。

君はそれから少し泣いたっけ。

僕の腕を離した。

僕は丘を登って鉄塔の周りの高い柵の前に立った。

君は後ろを向いたまま座っていた。

僕は柵を登ろうと足をかけた。

すると君も丘を登ってきて僕を降ろさせた。

君は「梯子かなんかないと登れないよ」と言った。

僕は諦めざる終えなかった。

僕らはまた丘の下に降りて、僕は「おなかすいた」と言った。

君は帰り際に、紫の小さな花がたくさん咲いてるところを

携帯で撮った。

僕はその花をやみくもにほとんどむしった。

君は「ここにもあるよ、これはいいの?」と言って

僕の手の甲にその小さな花を乗せた。

風が吹いて何度飛んでも、また何度も乗せた。

君に手を繋がれ、帰り道を歩いた。

途中気に入った花だけをちぎって手に集めた。

白いふわふわした猫じゃらしみたいな草が

低い柵の向こうにあった。

僕はそれが欲しくて君にそれを指差した。

すると君は「あれをとって来いって?」と言って

とって来てくれた。

僕はすごく嬉しい気持ちだった。

途中細い蛇がいたから、僕は捕まえようとしたけど

逃げられてしまって、悲しかった。

立ち止まってる僕に君が「なんで蛇を捕まえたかったの?」

と聞いた。僕は「捕まえてみたかった」と言った。

二人はうちへ帰り一緒にご飯を食べた。

その後二人で昼寝をした。




その七日後に僕は僕がむしった紫の小さな花たちをクレパスで描いた。

その夜に僕と君は「はなればなれ」になった。

君を想うとその日のことがよく浮かぶよ。

僕はあの日絶望的に幸せだったから。

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