お兄ちゃん

お父さんのこと思い出すとすごい悲しくなる、それと同じくらい

思いだすとすごい悲しくなる人がおるんです

それは私のお兄ちゃんです

お父さんのことは書けるのに、お兄ちゃんのことはあんま書かれへん

なんでこんな悲しくなるんやろ

お兄ちゃん生きてるけど、もう二度とあの頃のように戻られん

そう思うからやろな

私がまだ一歳くらいの頃にベランダで桶をプール代わりにして入ってて

私にぞうさんのじょうろで水掛けてる七歳くらいのお兄ちゃんと一緒に

映ってる写真がある、すごいお兄ちゃん楽しそうで、私は水着姿でちょっと

困った顔してる、戻ってみたいな、みんながその時おってくれた

お兄ちゃんが中学生の時は学校から帰ると掃除洗濯を済ましてから

まだ小さかった私が預けられてる知り合いの家までいつも迎えに来てくれてた

うち帰ってお兄ちゃんが特製のマヨネーズ入りのふわふわの卵焼き作ってくれて

すごいおいしかった、また食べたいな

お兄ちゃんとおって、すごい楽しいときたくさんあったし

すごいつらいときもたくさんあった

普段機嫌がええときはいつもあほなことばっか言ったり

変な顔とかしたりして、私は腹抱えて苦しくなるくらい笑ったりしてた

でも怒ったらめちゃくちゃ怖くて危なくて、何べんも殺されると思った

お兄ちゃんの運転する車にふたりで乗ってるときは、いつも変な緊張感があった

兄妹やのに、変に気を使ってしまうねん

恋人を見るような感覚では絶対ないんやけど、兄を見るような感覚とも

なんかちゃう、変な距離がそこにあるように思う

お兄ちゃんのことがいつも心配で、大好きでたまらないのに

メールなんかこっちからしたことほとんどないし、向こうからも来ない

でも一回私が家出してなんの連絡もせんでおったときに

「練炭自殺しようおもてる?」ってメールが来たことがあって

普段はそんな心配は口に出さん人やから

心配してくれてるんやって、思ってすごい嬉しかった

今は一緒に住むことできひんけど、長生きできたら

また一緒に住める時来るかもしれへん、そう思うから

生きてたいって思うよ

この胸のしこりがもしがんやったら、どうなるんやろな

みんなを心配させて悲しませてしまうの、嫌や

生きていたいよ
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