泣かせ鬼

踏み込めないものが誰の心の中にもあって

みんなの心は誰のものでもなくって

ぼくの心もぼくのものではなくなって

悲しくて泣いている人を怒ることなんて

誰もしたくない、ほんとうは怒ってるんじゃなくて

一緒に泣きたいんだ、怒ってるのは

泣いてる人にじゃなくて、泣かせるものを

怒ってるんだ、誰でもないものを怒ってるんだ

踏み込んでしまった時、泣かせたくない人を泣かせてしまう

泣いてる人に拍車をかけて泣かせるんだ

そしてもうなにがなんだかわからなくなって

結局最後は一緒に泣くことしかできないんだ

鬼の顔もずっと続かないのさ、泣いて泣いて

泣き止まないのさ、泣いてる人が泣いてるかぎり

鬼の魂はひどく弱いということさ

家族でも友達でも恋人でなくても、他人かも知れない

でも鬼のように怒る、でも効き目はことごとく裏目にでる

踏み込んではいけないものがあるのさ、鬼はどうしようも

できなくなって、そんな自分にも泣くしかできないのさ

ほんとどうしようもないことがたくさん山ほどあるのさ

それを抱えてみんな生きてる、誰もがぎりぎりの

きれぎれの心でなんとか毎日を過ごして生きてる

わかってるんだ、わかってるさ、ぼくだって、ぼくだって

でも泣かせてしまうことしかできない僕は鬼で

誰も救うことができない鬼の今日が明け暮れる




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