寝たきりの女と殺す男

その場所には私以外に四人程いる。一人は知っている人間、知らない中年男、知らない女二人。西洋風の容貌で四十過ぎ程の男が猟銃、短銃を手に持ち現れる。澄ました顔で銃をこちらに向けている。その場は蒼然となる。脅えきっている私に向かって男は、おまえはいいんだよ、と言った。私は少しホッとして男に交渉が出来る望みを持ち男に近付いて行った。半ばまだ脅えの残った私が男に向かい、何故殺さなければならない、と話し掛けると男は私を地面に倒し込みこめかみに猟銃の銃口を突き付けこう言った。おまえは殺されたいようだな、殺される人間というものを味わいたいんだろう、殺してやろうか、ははは。私は今に自分の頭が破裂するだろう恐怖に息も上手く出来なかった。男は私から猟銃を離すと逃げる中年男の方に歩いて行きそれに向かって発砲した。私は恐怖のあまり立ちすくんでいると、私のやや左後ろに走って逃げてきた女に向けて男は発砲し、女の頭は破裂した。私は恐くて振り返ることが出来なかった。男は私以外の人間を全員殺し私の側に座っていた。私は咽び泣きながら、自分の中にある媚のような偽りを認めながら、男に抱き着いて泣いた。男はそれを受け入れた。
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