石焼芋を腹一杯食いたい、腹一杯食って雨の中外に走り出て歩道で思いきりこけて顔に一生残る傷を残したい、おでんを買って帰りたい、チビタのおでんと、しらたきを買って帰りたい、そしてまた帰りにこけて、こけた勢いで飛んでいったしらたきを追うと野良猫のひもじい家族がしらたきを食べていてわたしはそれを眺めながらチビタのおでんのこんにゃくだけ取っておいて残りをやるだろう、しかしこんにゃくもやはり自分が食うよりこいつらに食わしてやろうと改心し、こんにゃくも野良猫家族のところにほおるだろう、すると猫たちはこんにゃくには見向きもせずに鼻で笑う。わたしはその中の子猫を母猫が必死に大根を食らっている隙を狙ってこっそり誘拐して家に持ち帰った。
あくる朝、子猫は部屋中に糞をして姿を消していた。
歯を磨きたい、とそうわたしは思うべくして思いに至った。しかたのないことだった。歯を磨けば歯が痛いのは治る。
その晩、隣に住む人間が風呂から上がるまでにサークルKサンクスに行かなければおでんはすべて売り切れる、という強迫性観念に苦しめられ、わたしは行動を起こすか起こさまいかとカワハギのような顔で天井を見上げていた。
口を窄め過ぎたために頬の筋肉が引き攣りあたりを激痛で転げ回った。
今度はその引き攣りをどうにか治そうとウーパールウパアのように口を一文字にした。
違う筋肉が引き攣り、忍者になりたい、と心のうちで叫んだ。
忍者のような速さ、俊敏さでおでんを買う以外におでんを買う辱めからは逃れられない。
とぅ、いうことぅは、おでんを買う前にわたしは先に忍者にならねばなるまい。
しかしどこへ行けば忍者の修行ができるのか。わからないので、とにかく京都太秦村に行こう。
「京都行きます」の怪
デンデンデデーン、デンデンデデデデデーン♪ドンジャーンドンジャーンドンギャギャギャーン♪
怪奇大作戦
買気大作戦。忍者のコスチューム買いに行くんどすえぇ。
はっ、あの揉み上げはもしや・・・・・・!牧さん!
「ううむ、謎だなあ」牧さん、何が謎なんどすえ。
「いやね、さっきそこの平野屋から出てきたんだけどね?その入り口からずうっとカワハギの死体が転々と落ちているんだよ、不気味だなあ、こりゃ」そりゃあ不気味どすなあ。
「だろう?他の鯖や鰯ならそこまで不気味でもないが、カワハギが落ちているこの光景をご覧よ、非常に不気味だよ」そうどすね。
「どれも口が尖っているんだよ」そりゃカワハギですから。
「ううむ、実に不気味だ。あ、君、ちょっと手伝ってくれないか、このカワハギが一体どこまで続いているのか確かめたいんだ、一人では不気味でしかたない」へぇ、わかりやした。
「カワハギの料理は実に多彩でね、刺身 · 肝和え · うしお汁 ・ 炊き込みご飯 · 肝吸い · 味噌汁 · 鍋 · 握りずし · 唐揚げ · 天ぷら · 肝煮 · 肝の刺身 · バター焼き · 煮付け · 塩焼き · 肝丼 · みりん干し · 肝の酒蒸し · 卵煮つけ · 軍艦巻き · 酒蒸し、などなど」よくご存知どすな。
「しかし僕はカワハギが大嫌いなんだよ」嫌いなのにすごく詳しいんだね。
「あの顔を見つめていたり、想像するだけで口が尖ってきてしまうんだよ」あ、ほんとね。
「これじゃあ、ひょっとこだあ、仕事にならない、こんな顔で捜査はできないからね」ですな。
「だからこの事件の謎を早く解いてカワハギを僕の脳内から消さなくてはならない」カワハギも罪だなあ。
「カワハギの口は見ての通りちいさくおちょぼ口だが、中にはペンチのような頑丈な歯がある奴がいるんだ、君、そこのカワハギまだ生きている、ちょっと口の中に指を入れてご覧なさい」やでっすっ。
「噛まれたらひとたまりもない、僕が子供の頃うちは貧乏でね、ペンチが家になかったから学校の工作の授業のある日にはカワハギをこっそり学校に連れてってその口をペンチ代わりに使ってよく愛玩したものさ」ペンチとして愛玩したんすね。
「しかしその時決まって僕の口はカワハギのように尖っていたから心配して僕を見に来た先生がカワハギを隠し持っているのを発見し、カワハギは没収されてしまったんだよ」そしてそのカワハギは?
「無論、先生の晩御飯さ」悲しい話っすね・・・・・・。
「カワハギの別名は、ハゲ、バクチ、そういえばその奪った先生はハゲのバクチ打ちだった」因縁を感じたんでしょうかね。
「きっとそうに違いない、運命には逆らえないということだ」そうっすね。
「あっ、見るんだ、君、ここでカワハギの死体はぷつりと無くなっている!」ほんまやねぃ!
「ああっ!!こっ、ここは・・・・・・」どないしたんです、牧さん!
「こ、ここは、そのハゲバクチ先生の家だ・・・・・・!」なんですトゥ?!
「ど、どうゆうことなんだ・・・・しかし僕は飽くまでSRI科学捜査官、私情のために捜査を打ち切ることはできない!よし!ハゲバクチ先生の家を訪ねよう」ピンポオン。
すると、戸を引いて中から現れたものは、巨大なカワハギのコスチュームから人間の手と足が出た怪物であった。
「!!!!!」!!!!!??????
牧史郎は静かに戸を閉めた。
「さっ、帰ろうか、あははははははははは」うん、帰りましょう、あはははははははは。
「ギヤャーッッ!!」
闇を、引き裂く 怪しい悲鳴
誰だ 誰だ 誰だ
悪魔が今夜も騒ぐのか ウウン
SRI SRI 謎を追え
SRI SRI 怪奇を暴け
レッツゴーッ!