燃え行く椅子

bokuが今日、厠で悟ってしまったこと、それは「人間から芸術というものを取り除いたら人間は阿呆でしかない」ということである。
昨今、火災報知器を屋内に取り付けることが義務となった。
ということは、どういうことか、というと僕の家には椅子だけがあって机がないという事実がばれてしまうということだ、これは小さな波ひとつ起きない水面に穏やかにやってこようとする波の低さは低いが、それが僕に与えるものは大きい、何故か、それは火災報知器を取り付けに来たおっさんか、または兄ちゃんに、この部屋には椅子はあるが、机がどこにも見当たらない、という異常な事実を発見され、絶対おかしい、こいつ、絶対どっかイカれてるのだろう、精神異常者に違いない、早く火災報知器を取り付けなくては、取り付けるのが遅い、少しゆがんでいる、こんなものを取り付けられるせいで、僕は焼死が出来ないではないか、などと発狂してわめき散らされて殺されるかもしれない、と恐れられるに違いあるマイのだ。度内証。どないしょう。しかもおっさんかにーちゃんが取り付けている間、僕はその椅子に座って見ているに違いない。なんか椅子に座ってずっとわしのこと見てるで、おい、怖いなぁ、はよ取り付けて帰りたいわ、うわっ焦って手が震えてうまく取り付けられまへんやん、どないしょ。と思っている火災報知器鳥付け人を僕は伊豆に座って、椅子に座ってただじっと見詰めているんだ。それにさして僕は椅子に座りながらずっと瞑想的音楽を口ずさんでいる。火災報知器鳥付け人は、じゃあ取り付け完了しましたので、一度正常に報知するか試してみますわ、と言ってライターで僕の部屋の布団に火をつける。買ったばかりの敷布団が燃えてゆく。そして火災報知器は見事に放置。ははははは、動きませんね、あっれぇ、おかしいなあ、もっかい取り付け直しますわ、ゆうて火災報知器鳥付け人は部屋がもうもうと燃えてゆく中椅子に座ってそれを見守る僕に見守られながら火災報知器を取り外してまた取り付ける。はよ、はよ取り付けないと火災報知器が燃えてアウトやわ、はよ取り付けないと、火災報知器が燃えてしまったら何のために俺は取り付けに来たんかわからんがな、阿呆やん、はよう、はよう、はよう、はよう。椅子に座った僕は燃えてゆく、椅子は燃えている、椅子は燃えている、椅子は燃えている、燃えても燃えても椅子は四本の脚で僕をただ座らしている、燃えてゆく僕を。
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