ボウフラ記

嗚呼っ、動悸が烈しいっ、おさまんねと思って治療の為に日記を書きはじめたらば途端動悸くんが大人しくなったもんだ、ほらね、誰かに呪われているのだと思ったけれど、違った、日記書け、阿呆、惚け、糞野郎、って動悸くんはゆうていたんだ。はい、書きます、五百文字は書きましょう。今で百三十、あ、四十、五、六、九、あれおかしいよ、なんか、まあええわ、ええすわ、そんなこと、そう、何を隠そう、僕は、自分だけの為に書いてんだよ、だからいいもーん誰も読まなくたってよろしいわい、僕の世界は僕だけのもの、僕は死ぬまでずっとひとりぼっちでいる、決めたわ、わし、嫁はん、いるかあっそんなもん、わしゃあなぁ嫁はんの相手する時間あったら自分の相手するんじゃ、自分をいかに苦しめることができるか、それに一生費やしたらええんでしょ、わしの神はそうゆうとる、ゆうてるわ、わ、わ、わ、わわわ、わあわあ、わにゃにゃあ、わみゃーん、わっふん、ふんだまべー、べむぼんが、うん、わかってるよ、あなたの言いたいこと。僕を殺してくれるんですよね。うん、ありがとう。僕もあなたを殺すよ。待ってて、待ってて、待ってて、僕は愛する人しか殺したくないんや。無。終われないよ、馬鹿、この世の馬鹿、馬鹿、ほんと馬鹿、みんなボウフラだ馬鹿、ボウフラは目玉だけがヤケに大きいんだ馬鹿、ボウフラの馬鹿、みんな馬鹿、みんなボウフラ、馬鹿、阿呆、馬鹿、うまじか、ぅマジか?マジだ馬鹿、マジでこの世はボウフラから出来たっけなぁて何思い出してんねん、おまえを作ってる全細胞合わしても全然足りひんくらい前、一匹のボウフラは悟っちまいやがった、わし、ひとりはやっぱ嫌っす。ちゅうたもんやからもうそっからボウフラはあらゆる物質に迫った、迫り狂うた、わしとどや、おまえ、なあわしとなんかせえへん、なあわしってどう思う?しかしどんだけ物質達に話し掛けても無視、ボウフラは落ち込んで蚊になった、ブーンって飛んでたある昼過ぎのことであった。蚊は一輪の白い花に恋をしましてん。わしが、雄蕊を持った花ならあの娘と交配できたのに。蚊は蚊である己を呪うた。蚊はブーンっつうて白い花に止まり花粉をつけて知らん花のとこまで持ち運び、その雄蕊につけて泣きながら交配の手伝いをした。蚊が短い一生を終える時、蚊の周りには一斉に白い花たちが咲き、辺りは真っ白な野となり、その中で蚊はブーンと最後の言葉を残し息絶えた。

これが真実のこの世の始まりの話である。

ボウフラはフラフラと防風の中、ララララァと歌っていたからそう呼ばれるようになった。らしい。

ボウフラ記。完。
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