誰一人希望を持たせられないのだろうか
誰一人悪い習慣を断たせることはできないのだろうか
誰一人わたしの言葉は届かないのだろうか
もし家畜すべての魂が一つの人間の魂となって生まれてきた彼に
僕は会ったなら、彼の前に言わなければならない
「僕は君の死体を美味しいからと言って食べ続けてきたんだ」
彼はきっとこう返すだろう
「・・・・・憶えちゃいないが、憶えているのは、そうだな、こういうこと、こうやって草を踏むこと、草を踏むのが好きみたいだ、あと草を食べること、草の匂いが好きだ、ねえ今からピクニックへでも行かないかい」
「いいね、たくさん行こうよ、君とずっと一緒にいるよ」
「人間って面白いね」
「嵐の中のピクニックになるが、いいかい」
「なに、へっちゃらさ、本当に僕は全然平気だ、みずみずしい草の食べ放題、その中を走り回れるんだ」
そして君は嵐の中で出会った傘も差さず雨に打たれていた少女に恋をするんだ
無口な少女もまるで動物のように馴れ馴れしく話しかけてくる君に恋をする
二人は恋の迷宮に落ちていった
そこは、血の雨が降っていた
彼女は屠殺場で働いていた
彼女は君に言った。
「昔から動物が殺したくてたまらなくなるの、きっと殺せなくなれば気がおかしくなって死んじゃうんじゃないかしら、ここはわたしの天国、だって毎日動物を殺せるんだもの」
血が引いた君の顔はまるで、やわらかな春空のようで透き通って青い。
その表情が一瞬、昨日殺した牛と似てるな、と彼女はそう思った。
心配した彼女は君に言った。
「きっと野菜ばかり食べているから貧血になったのよ、今から自慢の手作り和牛ハンバーグを作るわ、一緒に食べましょう」
「・・・・・なんか、なんもかんがえらんない、ああ空が青い」
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