始めに一匹の竜がおりました
ちいさなちいさなとてもちいさな竜の子です
とてもちいさなその竜の子は光り輝きながらゆらゆらゆらゆらとなんにもないなんにもない闇の中を泳いでおりました
真っ暗闇以外になんにもないその中で竜の子はだんだん寂しさがつのってきました
最初のうちはただなんにもかんがえずに闇の中を泳いでいるだけでよかったのに
竜の子はいつしかひとりぼっちなんだということに気づき始めたのです
竜の子はふと思いました
(俺がもう一人いたら、この寂しさはなくなるのかもしれない)
そう思った瞬間です
闇の真っ暗な向こうのほうからゆらゆらとゆらゆらと泳いでくるちいさな光る波が近づいてくるように見えました
それはどんどん近づいてきてやがて竜の子の目の前まで来ました
それは竜の子の前で光りながらゆらゆらゆらゆら揺れて波打っておりました
竜の子はこころが波立つ思いにゆれました
(なんて嬉しいんだろう、俺がもう一人いる)
竜の子はそのじぶんとそっくりな光る波と一緒にあそびました
ずいぶん遊びまわって、ふとした時です
竜の子は光の波とふれあったのです
その時です
竜の子と光の波は一つとなり形を帯びました
竜の子はまたひとりぼっちになってしまったのです
竜の子はまた思いました
(俺がもう一人、また俺の前に現れるように)
するとどうでしょう
竜の子とそっくりな形を帯びたものが闇の向こうからやってきたのです
その光るものと竜の子はまた遊びました
遊びまわったあと竜の子は思いました
(ふれあうとまた俺はひとりぼっちになってしまうだろう)
(そうだいつまでたってもひとりぼっちにならないように)
(俺がたくさんたくさんたくさんもう数えきれないほどにたくさん生まれてくるように)
いつしか真っ暗闇の中は光り輝くものであふれました
そしてそのひとつひとつの竜の子たちがいろいろなことに思いをはせました
(さみしいのはいやだ)
(かなしいのもいやだ)
(たのしいほうがいいな)
(でもずっとたのしいとたのしくなくなってしまう)
(あいしている)
(だいきらいだよ)
(あいしている.....)
(えいえんに.....)