奇想天外

僕はとても驚いた。今日の夢に僕の愛する皇太子と皇太子妃が出てきたのである。夢の話なので夢として聞いていただきたい。皇太子にはとても大事な人がいた。それはかつてラフカディオ・ハーンの弟子でもあった何処かの国の人で彼は写真家であり、また探検家であった。その彼の記念館に何故か僕は皇太子と皇太子妃の案内で館内を見回っていた。もう一人誰か館に勤める男だろうかがいて、その者は皇太子に彼の詳しい生涯の話を僕に話されてはどうか、というふうに言った。皇太子は一つの大きな写真の前でその手前のガラスのショーケースのようなところに手を着き、写真をじっと見てしばし考え込んでいた。そして話すことがまとまったのか、突っ立っている僕の左横へその優しそうな顔の皇太子は来て皇太子にとって一番の偉大な彼の生涯の話を優しい声で話してくれた。僕は神妙深く聞いた。聞いているとどうやら彼の生涯はものすごいものであった。僕は皇太子のさらっと話すその言葉に耳を疑った。とても丁寧に語られる美しい言葉と共に語られたからである。「彼はね、若い頃にたくさんの女性とセックスをして暮らしていたんだ。そのことで彼は酷く後悔して苦しんで、そしてその罪を贖うために写真と探検の道を選んだ」僕は、はっとしてわかった、きっと皇太子は僕に話す前にこのことをどう言おうか、というのを非常に悩み考えていたのだと、何故か。夢の中の僕はまだ子供だったからである。しかしその言葉がわかるくらいの微妙な年頃ではあった。だから皇太子は僕に一番分かりやすい言い方で言ったに違いあるまい。顔をしかめて上を見たりして聞いている僕の右となりで皇太子妃は少し緊張した慈悲深い観音菩薩のように微笑んでいた。僕の心は至極感激に充ち、また穏やかであった。

そのあとは卒業式の体育館で紺色の制服を着た僕は教師のタモリに名前を呼ばれていた。卒業式が終わり最後のみんなでの夜中の帰り道、一匹の蛇がいた。僕の家にまで入ってきたその蛇を外に逃がすのに必死だった。
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