ハイエース二号

わたしとお父さんは新しいハイエース二号に乗っていた。
夜に運転するお父さんの左に乗りながら今日の晩ごはんの話をしている。
お父さん「湯豆腐に入れるん豆腐だけでええ」
わたし「肉入れてもええで?」
「玉子あるから肉はええ」
「玉子はあれしたらおいしい、あの味ついたあるとこにポチャンて落とすやつ、あれ、土鍋の中に」
お父さんはそれを聞きながら横断歩道をがやがやとちんたらと歩く連中に腹立って車を前に出してる、わたしは焦って、「はよ歩いてくれよ、もう~」と心の中で困ってる。

そして夢うつつの中でわたしは思った。
そや、こんなふうに設定を作れば毎日お父さんの夢が見れるんや。
夢うつつの中を抜けたわたしは思った。
設定というのはハイエース二号という設定らしかったが、なんでその設定を作れば毎日お父さんの夢が見れると思ったのだろう、確かに昨日もお父さんの夢を見たけども、変な意味のわからん夢だった。
現実のわたしはあれから十年経とうとしてるのにまだ1%も癒えないような同じ喪失感の中に打ちひしがれているというのに、夢の中の自分はなんたるのん気な夢を見ていることだろうとおかしくなった。腹減ってんのか、最近食いもんの夢が多いが。
ひさしぶりにお父さんが大好きだった湯豆腐食いたいな。一人で食っても寂しいけどな。
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