見るからに英国の紳士は口髭を生やして私の前でそれを食べている。
見るからにはだいたい19世紀といったところで私はその年の20も上であるだろう英国の紳士に恋をしている。
古い映画のワンシーンにありそうな私は目の前の料理に一口もつけずに相手に向ってなにやらしきりに話しかけている。どうやら何か縺れているらしい。嫉妬と恋慕の苦しみをぶつけているといったところだろう。
英国の紳士は余裕たっぷりの笑みをたたえもぐもぐトラウトサーモンを食べて高級白ワインなんか飲んでる。
腹立つなあ、ほんと、そう思いながらも美味しそうに食べているところを観て自分も食欲が湧き出した。
「わたしも食べたい」と私は言った。紳士は「食べたらいいじゃないか」と言うと私はトラウトサーモンのムニエルをフォークで突き刺して一口口の中に入れた、美味い、でもちょっと塩加減が効いてるからご飯が欲しくなるな、これ、そう思って「ご飯食べたいな」と私は言うと紳士は「あるじゃないか」と言ってテーブルの上に目をやった。
そこには小さな茶碗に入ったご飯が、すでにだいぶ前から置かれていた、それを忘れていた私は、Oh、と心の中で歓喜して表面が固くなってるご飯を食べ始めた。
という夢であったが全く夢とは滑稽なものだ。夢では必ず願望と恐怖が表れるはずで、まあ英国のそういった食卓で英国の紳士を前にしてトラウトサーモンのムニエルが食いたいなという願望はわかる、でもなんで最後茶碗が出てくるのか、これはその潜在的な願望として、たとえ、私は英国の食卓で英国の立派な紳士を前にして食べることがあっても、ライスだけは絶対茶碗で食いたいという隠された願望の現れであるのだろうか、確かに皿に入ったライスは食いにくいよ確かに、あれは皿の面積が広いだけに、広いだけに、飯粒がひっついてとれにくいのや、だからその潜在的なところでずっと蹲っていた願望はわかる気がしたね。
後、腹を空かせたままで寝ると必ずと言っていいほど飯の出てくる夢を見るから俺はなんだかやだね。
なんでトラウトサーモンかというと昨日トラウトのスラング用語を検索していたからで、スラングって言うのは面白いけど、僕が思ったのは向こうの人ってかなり皮肉がきついんだな、ってことだ。トラウトサーモンに罪はないよ。
まあそういった純粋な動物や生き物を汚い人間に当てはめるのは僕は好きじゃないな。
このメス豚、とか、この雌犬とか、僕もまあよく使うんだけれども。って冗談だよ。
僕が良く使うのは、このオス豚、この雄犬、この、負け犬、この、ファッキンラブバニーだ。
ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスの奥さんデボラ・カーティスが書いた「タッチング・フロム・ア・ディスタンス」を読んでいる。驚きと感動の連続で少しずつ噛み締めて読んでいる。
今日もある箇所に吃驚してしまった。同時代の同じレーベル仲間であるファクトリーのドゥルッティ・コラムのファーストアルバム「The Return of the Durutti Column (1979年)」の紙やすりジャケットのそのジャケットに紙やすりのシートを貼り付けるのに人手が必要となったときに、ファーストアルバムを発売して順調な時のジョイ・ディヴィジョンはポケットマネーを増やすためにその仕事を受け入れ、他のメンバーはポルノ・ビデオに熱中しているときにただ一人イアンがその仕事のほとんどをやったと書かれているのである。
僕は嬉しかった、だってそのアルバムは僕がドゥルッティコラムで一番好きなアルバムだからだ。ジョイ・ディヴィジョンも大好きな人がそのイアンが貼り付けた紙やすりジャケのレコードを今でも持っているのかもしれないね。
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