ハライソから

今何時?と起きて時計を見たら午前0時を回ってる。おかしいな、今日は朝の6時には寝たはずなのに。寝ても起きても難聴が悪化したままだ。枕は抜け毛だらけ、敷布団の裏はカビだらけ、最近不整脈が甚だしい、俺はどうしても部屋で一人で死ぬわけにはいかない、突然死するわけにはいかないのでどうか僕を呪い殺さないでください。僕は本当に些細な喜びすらことごとく奪われてゆくんです。この生き地獄をほんのちょっとでも魔儀らワッセル、紛らわせることが次々と無くなって行くんですよ、わかりますかー?わかりますかー?それがあなたに。って、あっ、すみませんすみませんすみません。僕は決してあなたを呪い殺さないので僕のことも呪い殺さないでください。僕は最近、朝にぜんざいを食べるのが好きです。でもちょっと味が薄かったりすると悲しいかな。俺はこの生き地獄に戻ってくると何者かから絶大な賞賛を与えられ、また鼓舞されているような気がする。つまりそれは俺の脳内にいる悪魔たちを喜ばせているのではないかと俺は思うと狂喜乱舞する。俺はここにい続けなければならないと感じる。死ぬまで、死ぬまでこのインフェルノに。でもこの地上は全ての人間にとって地獄以外の何ものでもないのではないか。たとえ幸せと感じて過ごしていたとしてもだ。それは幸せと感じてしまうことの苦しみが自分のどこかでもがき苦しんでるのではないか。俺にはそれが見える。全ての人間は地獄を味わい続けているのだと。美味いと幸せを感じて頬張るその食卓の肉が陰惨に拷問された挙句殺された死肉であるのと同じように。どこに行っても地獄だ。僕たちは地獄に産まれてきたんだよ。まだまだ自分の気付いていない地獄がある。恐ろしいかい?抜け出したいかい。ならば善人になってとっとと病気や事故にでもあって死ぬんだね。善人になるほど地獄で苦しむ必要性がなくなってくるから早めに死ねるのさ。俺がこの生き地獄から脱出するには善人になるほかない、でないと120歳まで生きかねないぞ。俺は早く死ぬために今日から善人に、そうだ、いい人間になろうではないか。会う人会う人と当たり障りのない雑談、べんちゃら、相手に不快にはさせない気の利いた言い回し、相手を持ち上げる話術、馬鹿真面目は捨てて相手に合わせるやり方で、そして心では人を見下し嘲笑い哀れに思う。完璧ではないか、これだ、これこそいい人の典型的な姿だ。俺もそうなろう、そして早めに死ぬのだ。そして天国から俺を馬鹿にした奴全員に対して囁き続けよう。俺を馬鹿にした奴は全員、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、これはつまり早く善人になっておまえらも早死にしろよ^-^、っていう愛の言葉である。俺のことを嘲笑った者は一人残らず全員早く死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、祈ってやるよ俺がおまえらのために早く死んでハライソからな、でいでいはらいそはらいそ。小鳥のような囀りで一日中おまえたちの耳の奥に囁き続けてやろう。これでみんなも幸せになれる。なんて幸せなのかしら。ああ、死んでしまえ、ああ、死んでしまえ、ああ、死んでしまえ、そう囁き続けていると皆怪奇的な変死をしてしまった。私は部屋の隅に蹲って震えていると死神に見つかりインヘルノへ突き落とされた。枕と布団は抜け毛だらけ、敷布団の裏はカビだらけ、足の踏み場もないほどゴミやモノが産卵した部屋と廊下、そのゴミとモノが産卵した卵を踏みつけてプチュッという嫌な音を聞きながら過ごすここはまさしく地獄であった。俺は全てに呪いを馳せた。死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、死んでしまえ、そして抜け毛だらけの布団の上でのた打ち回りながら叫んだ。死んでしまえ!死んでしまえ!死んでしまえ!自分の罪が自分から抜け出たような解放感に満たされた。そして部屋のドアを誰かがノックした。私はドアを開けた。そこには私の罪が立っており、私に向って天から降りてきた天使のような美しい声で囁いた。





「死んでしまえ」




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